怠惰に創作

細々と小説の様なものを創作しています。設定など思い付いたように変更しますので、ご容赦ください。

2代皇帝と平和条約 FILE1

2代皇帝である「パウリナ・ソロモス」は、宇宙暦140年にウルギア帝の長女として生まれた。3人目にして初の女子だった事でウルギア帝は大変に喜んだそうである。

やっぱり男親は女の子が生まれると嬉しいのだろうか?

そんな彼女は宇宙暦170年1月7日に、父親である初代皇帝ウルギアより帝位を譲られ、ゲーディア皇国2代目皇帝(女帝)として即位する事となる。

前年の1月16日のバルア事変以来、ウルギアは公務に関心が無くなり、その代役として彼女が公務を熟し、約1年後に帝位を継ぐ事になったのである。

ここで一つの疑問が出て来る。それは、パウリナの王位継承権はは3番目で、アルデルの次の皇位継承者は次男のサロスである筈である。では何故、彼女が皇帝に選ばれ、サロスは選ばれなかったのか? その理由は「二日酔い」である。

皇族としては大変不名誉な理由でもあるが、二日酔いがなぜ皇位継承と関係があるかと言うと、あのバルア事件とも関わりがある事である。事件当日、所謂独立記念日の前日に、サロスは若い貴族の子弟を集めて独立記念日の前祝と称してどんちゃんさ‥‥‥パーリーを催したのである。そこでサロスは飲み過ぎてしまい、記念日当日に二日酔いで欠席してしまったのだ。ウルギア帝としては激怒したかと思うとそうでもなく、あまり気にも留めなかったのだそうだ。と言うのも、彼の行動は昨日今日始まった事では無いのだ。彼は若い糞‥‥‥不良貴族を引き連れやりたい放題していたらしい。酒と女とギャンブルに興じ、逆らうものは暴力と権力でねじ伏せる。故に、ロイヤルファミリーの中で唯一、国民からの人気がゼロと言う有り様だった様だ。そのため父帝ウルキアは彼に何ら期待せず。彼が大事な式典に二日酔いで来られないと聞いても、何とも思わなかったのかもしれない。このような冷めた親子関係が彼を後継者から外されたとみても、あながち間違いでもないかも知れない。

あと、取材した中で父とサロスの関係は冷めていたが、兄妹間はそれほど悪かったと言う話は無い。兄のアルデルは何時も弟を気に掛けてたし、パウリナも兄を心配していたようだ。そのためかサロスもこの二人の言葉には耳を貸し、反省する事はあったようだが、欲求には敵わないのか、暫くするとまた同じ行動を繰り返す有り様だった。

それと、母親であるテリーサ皇后との関係だが、面白いほどふたりに接点が無い。これはウルギア帝と同じ立ち位置を取ったと思っていいのか? それとも別の理由があるのか? ロイヤルファミリーの写真には、必ずサロスと皇后は離れて写っており、家族写真以外でこの二人が一緒に映っている写真が無い。勿論、他の家族と皇后が映っている写真はあるが、このふたりを写したものは無く、あるとすれば偶然写ったものくらいらしい。

更に、取材を進めている中である人物からサロスは皇后の実の子では無いと言う噂を聞く事が出来た。要するにウルギア帝と他の女性との間に出来た子で、その女性が事故か病気で亡くなた後に引き取られたと言うのである。そのため皇后は自分の子ではないサロスを毛嫌いして一緒に写真に写らず、ウルギア帝も皇后に遠慮すると同時に、日頃の行いもあって段々彼を邪険に扱って行ったのではないかと、この噂を俺に教えてくれた人物は言っていた。ただ、他の人にその話をすると、確かにそういう噂は聞くが、皇后は慈愛に満ちた優しい人物で、そう言った理由でサロスを毛嫌いするとは思えないと言っている者も多い。何方が本当だろうか? 今となっては分からないが‥‥‥。

と、まぁ、この話はここらへんにして、ウルギア帝はあの事件の後、失ってしまった皇后とアルデル皇子を悲しむ感情と、二日酔いで難を逃れた皇族の面汚しであるサロスを憎む感情が入り混じって、彼から皇位継承権を剥奪し、更に別邸に幽閉してしまったのである。そしてこの瞬間に、パウリナが皇帝に即位する事が決まったのである。

と、此処からは2代皇帝となったパウリナ帝の話に戻す。

まずはパウリナ帝の家族の紹介をしようと思う。皇帝に即位したこの時点で、彼女は既に結婚している。夫の名前は「ディーノ・ロプロッズ」と言い、ある意味一般庶民と言っていいだろう。では何故一般庶民である彼が皇女と結婚できたのか、それは彼の父親の「サウル・ロプロッズ」が下院議員だったからだ。前にも話したが、この国では貴族である上院議員と、市民の選挙で選ばれた下院議員がいる。国政は下院が皇国議会で議論して決議し、上院はその下院から上がって来た政策の精査が仕事で、そして上院が認めた政策は皇帝に上申され、許可を貰って初めて政策として機能するのである。

その二人の出会いは、貴族のパーティーでの事である。貴族は自分が懇意にしている他の貴族や政治家、軍人、その他の有名人などを招待して交友を深めようとしたり、その結びつきの強化を確かめるため、よくパーティーを行っており、そこで二人は出会ったのだと言う。当時、彼は父親の秘書の様な事をしていたようで、父親と共にこのパーティーに来ていたようだ。

一方のパウリナは、今回のパーティーがアガレス(大)公のだった為に、皇帝の代理で参加していた。

ウルギア帝自身は、こういったパーティーに参加すると、皇帝が来た来ないで貴族間での優劣や、4公などの有力貴族の対立を増長すると考えて、会えて行かず、変わりに子供たちを行かせていている。その時はパウリナが参加したのである。我々の感覚だと、親戚のおじさんに家に親の変わりに行って、美味しい物を食べて来ると言った感じだろうか? 違うか? 

それに他の皇子が来た場合、主催者の貴族の感情にも大きな起伏があると思う。アルデルが来れば良いが、サスロが来たとなると残念に思うのではないだろうか?

さて出会いは、 パーティーの雑多に疲れたパウリナが、ベランダに出て夜風に当たっている処に、同じ理由でパーティーを離れたディーノと偶然に出会ったのが始まりだと言われている。パウリナの方は彼の事は知らなかっただろうが、ディーノからすれば、まさか皇女とふたりっきりになるとは思いもしなかっただろう。この時、二人の間で如何いった会話がなされたかは定かではないが、これが切っ掛けでふたりは徐々に仲を深めて行く事になる。

これに喜んだのはディーノの父サウルである。皇女と結婚でもすれば、自身は外戚として皇族の一員になる事も出来るのである。直ぐに彼は行動に出る。議員仲間を抱き込みつつ、貴族にも交渉して協力を仰ぎ、息子と皇女の仲が上手く行くように働きかけたのである。その苦労が実ってか、宇宙暦166年、ふたりは結婚に至ったのである。それと同時期に、父親には男爵の爵位が授与されて上院議員となる。2年後には娘のノヴァが生まれた事で、それを祝して親子ともども子爵の爵位が与えられる。

そしてパウリナが皇帝に即位すると、サウルは宰相となって彼女の補佐する立場になったのである。

勿論、それをやっかむ貴族、特にウルギア帝時代からの上級貴族である72領主からは不満の声も上がった。何故なら宰相は上級貴族が就く役職であり、サウルはこの時まだ子爵で、中級貴族の立場だったからだ。

だが、皇族の外戚であり、何よりパウリナ帝からの指名であった事から、陰口は叩かれても目立った事をする者はいなかったようだ。

しかし、パウリナが皇帝に即位し、ディーノの父親が宰相になって1年後の宇宙暦171年、ひとつの事件が起こった。「ベリト事件」と呼ばれたこの事件は、当時の第28都市「ベリト・シティ」領主であるベリト伯が失脚し、ロプロッズ父子がその都市の統治権を引き継ぐと言う事件が起こったのである。事の起こりは、ベリト・シティで大規模なデモが起こって暴動にまで発展し、その鎮圧にベリト伯が手間どった事と、武力による鎮圧だった事で、市民を弾圧しているとパウリナの心証を悪くした事が失脚の理由らしい。

だが、それだけがベリト伯の失脚の理由では無いと俺‥‥‥私は睨んでいる。当時ベリト伯はパウリナが女性と言う事で皇位継承に懐疑的であり、何よりただの下院議員だったサウルが、宰相と言う重職に付いた事に不満を持っていたようだ。更に他の貴族が不満はあるが内に秘めていたのに対し、こと有る毎にサウルに反発していたようで、偶々暴動が起こった事でこれ幸いと彼を失脚させ、その領地を奪ったと言うのが理由だと私は思う。もしかすると、暴動事態も彼が陰で糸を引いていたのではないかと邪推してしまう。

まぁ、真相に付いての憶測は置いといて、これでディーノはベリト伯となり、72領主の一員となって家格で言えば上級貴族になり、皇帝の夫として相応しい家柄となったのである。

それではパウリナ皇帝の時世ではあるが、当初は父親のウルギアのやり方を踏襲していたのだが、宇宙暦172年、急遽ある政策の実施を宣言する。それが、政治的不干渉状態だった第3惑星エレメスト統一連合政府との、軍縮を基とする平和条約を結ぶと言うものだった。それが平和条約と名高い「パウリナ条約」である。

では、次はそのパウリナ条約に付いて話して行こうと思う。