怠惰に創作

細々と小説の様なものを創作しています。設定など思い付いたように変更しますので、ご容赦ください。

3代皇帝と軍事政権 FILE3

軍事政権が設立した直後から瞑想を続けている裏で、今回の主人公でもあるサスロ帝は一体何をしていたのか? これに付いては最初の時点では何もしていなかったと言ってもいいだろう。彼は軍事政権の傀儡であり、皇帝と言っても全くと言ってイイくらい発言権が無かったからである。お飾り皇帝、それが彼の在任最初期の評価である。

しかも、彼自身が政治に関心も野心もなく、ネクロベルガーの説得で言うなればイヤイヤ皇帝になったと言ってもいいだろう。そう言う経緯で皇帝になったのだから自分から動こうとは思わず、それが彼の皇帝としての出発点であった。

これは意外な事であった。私がドキュメント作品などで見聞きした範囲では、彼の評価は最悪の「暴君」や「狂君」だと言われていたからである。エレメストでは、サロス帝は自らが皇帝になる為に、「バルア事変」を目論んだ黒幕で、本来だったら家族全員を暗殺するはずだったが、父帝と妹が生き残ってしまった事で失敗し、それを知った父帝に幽閉されたものの、帝位についた妹から帝位を簒奪する為、軍と組んでクーデターを起こして最後にはその軍も粛清して皇国民を恐怖で支配した。絵に描いたような邪悪な皇帝として紹介されている。

当然ながらこの話は多くの誇張が含まれていると当時から言われているが、多くのエレメストの人々は信じているのである。当然ながら私もかなり誇張が入っていると思っている。大衆向けの物語によくある類の悪役である。だが、彼の最後を知る身としては、少なくとも皇国民からもいい評価を受けていない皇帝である事はまず間違いない。

因みにサロス帝の在任期間は、父帝のウルギア帝に次いで長い期間皇帝として君臨している。そんなサロス・ソロモスの生い立ちを少し説明しようと思う。

彼が生まれたのは、宇宙世紀138年にウルギア・ソロモスと愛人の間に生まれた子供である。当時のウルギア帝はまだエレメスト統一連合のメガシティのひとつである「ロークフォート」の一地方(都市)議員である。要するに不倫関係の相手との間に出来たのが彼なのである。ただ、彼が生まれた時、既にウルギアはその愛人と別れていて、自分の子だと認知し様とはしなかった様だ。だが、その愛人がDNA鑑定でサロスがウルギアの子供で間違いないと証明されると、流石のウルギアもサロスを自分の子供と認知せざるを得ない事となり、愛人に多額の養育費を払う事で事なきを得た様である。

清廉潔白そうに見えて、やはり彼も一人の人間だったのだと思う。

愛人とは養育費を渡すだけの関係となっていたのだが、6年後に弁護士と共に愛人のとの間に生まれた息子が現れた時の心中は如何許りだっただろうか? サロスが父親の下に来たのは、母親である愛人が事故で他界してしまった事で天涯孤独となり、当時第4惑星の行政長官となっていた父親の下に来たのである。

父親としての責任か、母親を亡くしてひとり身となった彼を放って置く事は出来なかったのか、ウルギアは彼を引き取って正式に家族となったのだが、妻のテリーサには何と言って説明したのか気になる処である。

とまぁ、興味が尽きないが、彼とソロモス家との関係は前にも話した通り可なり微妙である。兄であるアルデルと妹のパウリナとの関係は良好と言っていい関係だったが、義理の母親であるテリーサとの関係は他者から見ると冷めていたとも言え、宜しくなかった様である。

まぁ、旦那の不倫相手の子供を愛せるかと言うと微妙にならざるを得ないのかもしれないが、新しい母親が自分の事を突っぱねれば心も荒むと言う者である。サロスは来た当初は大人しかった様だが、日に日に我儘になって行ったとも言われ、父親が皇帝になって第4惑星が帝政を引く頃になると、第2皇子として可なりのバ‥‥‥不良皇子になってしまった様である。

そんな彼に貴族たちは眉を顰める者も多かったが、表だって父帝に苦言を言う者はいなかった様だ。理由としては若い貴族の子弟が彼の自由な生き方? に憧れ、彼とつるんでいた為で、自分の息子たちがそのグループにいる親などは隠しておきたかったのかもしれない。とは言え、酒に女にギャンブルと放蕩三昧を繰り返し、一般市民からの不興を買う様にもなっていた。

父帝からは半ば見放された状態で、元々付き合っていた愛人である母親が死んで、憐れみの心で引き取ったものの、正妻の手前、愛情を注ぐ訳でもなく、好きにさせていたら不良になってしまった。なんと面倒な者を引き取ったとでも思ったかもしれない。自業自得だが‥‥‥。

そしてあの「バルア事変」の際には、愛情も掛けていない彼が生き残り、愛していたアルデルが死んだ事で、怒りに任せてサロスから皇位継承権を剥奪して外出もできない様に離宮に幽閉してしまったのであろう。

こう聞くとサロスにも同情する余地はあると私は思う。8歳の子供が母親を亡くして血の繋がりだけで、よく知らない父親の許に行ったのである。心中は如何許りか計り知れないし、新しく出来た兄妹は彼に好意的だったが、新しい母親には好意的には受け止めてもらえず、その関係なのかウルギア帝も父親として引き取ったはいいが彼に対して余り愛情を注いだとは言えない。そんな彼が心を歪ませ、自分の存在を呪った故での行動だったのかもしれないと考えると、同情を禁じえない。

だがそんな彼にも手を差し述べた者もいる。それがネクロベルガー元帥である。

元帥は、怒りに任せて息子から皇位継承権を剥奪して離宮に閉じ込めてしまったウルギア帝に、少々やり過ぎだと進言したのだ。ただ彼の怒りは深く聞き入れられないとみると、お見舞いとしてサロスの許に息子を送ったのである。

無論ネクロベルガー元帥の息子とは、現皇国総軍司令長官のサリュード・ネクロベルガー総帥の事である。

このネクロベルガー元帥の計らいにサロスは大変喜んだと言う。サロスは政治には興味が無かったが、軍事に付いては一定の知識があり、特に戦史をモチーフにした英雄譚がお気に入りだった様だ。そしてネクロベルガー元帥の4年戦争末期での月の魔女こと月解放戦線の名将「ミリエル・フィル・アルテプス」との艦隊戦は彼の心を掴み、この世で最も尊敬する人物(軍人)なのである。さらに息子のサリュードとも意気投合した様で、以降は定期的にサスロの許に訪れる様になる。

こうしてみると、皇帝に即位に難色を示したサロスを説得できたのも、サリュード・ネクロベルガーとの関係が寄与していたのかもしれない。

そんな二人の仲を、嘗てサスロが離宮で暮らしていた時に離宮で働いていた使用人のひとりに話を聞く事が出来たので紹介しよう。

 

「ふたりはまるで恋人の様でした。ああ勿論、そう言った関係と言う訳では無いのですよ。サスロ陛下はノーマルな方でしたから‥‥‥お陰で酷い目に遭ったメイドも大勢いました‥‥‥」

 

元使用人は60代の老人で、当時の事をしみじみしながら語ってくれた。

 

「サスロ帝が女好きと言うのは聞きます。可成り酷かった様で‥‥‥」

「そうなのです。離宮に来た頃のサロス陛下は大変気性が激しい方で、よく周囲に無理難題を言っては暴力を振るってました。特にメイドたちは陛下の御眼鏡に適わないメイドはクビにして自分好みの女性だけをメイドにしていました」

「それは何とも羨ましい‥‥‥じゃなかった‥‥‥ひどい事で‥‥‥」

「ハイ、それで大変な事件が起こりまして」

「事件ですか?」

 

元使用人はコーヒーを口に含んみ、一息ついてから話し始める。

 

「ハイ、メイドのひとりを妊娠させてしまいまして‥‥‥」

「妊娠ですか!?」

「そうです、そして彼女にはフィアンセが居まして‥‥‥」

「て、ことは‥‥‥」

 

元使用人は私の顔を見て、想像している通りとも言わんばかりに笑みを見せつつ話を続ける。

 

「怒ったフィアンセが陛下を殺そうと離宮に侵入してしまって大騒ぎに‥‥‥」

「そ、そんな事が、資料には何も」

「それは揉み消しましたから」

「まぁ、こんな事が知れたら皇室にとって一大スキャンダルだ」

 

驚く私の顔を見て、元使用人はまたコーヒーを一口含む。

 

「サロス陛下を離宮に幽閉したのはそういった事が起きても揉み消せるのが容易だからでしょう」

「で、如何なったんですか? 成功はしなかったと思いますが‥‥‥」

「丁度来ていたネクロベルガー総帥の従卒が取り押さえまして、事なきを得たのです」

「そうだったんですか‥‥‥それにしても皇位継承権を失ったとは言え、皇族がこうも簡単に襲われるなんて、警備は何をしてたんですか?」

「警備などありませんよ、使用人とメイドが十数人程いただけです」

「えっ!? も、もしかしてサロス帝の性格を逆手にとって、ウルギア帝が彼を消そうとしたとか考えたとか‥‥‥」

「滅相もございません! 大帝陛下がそのような事をお考えになるなど!」

「で、ですよね。変な勘ぐりをしてすいません!」

 

突然怒りだして立ち上がった元使用人に対して私は謝罪して宥める。元使用人は急に立ち上がって声を抗たために乱れた呼吸を整えると、軽く溜息を付いて椅子に腰を下ろしてコーヒーをすすってから話を続ける。

 

「そして総帥の提案で以降はメイド全員を娼婦に変える事になりました」

「娼婦ですか?」

「左様です。それなら陛下の相手をするのは彼女たちの仕事の一環となりますし‥‥‥このような事件も起こらないと言う事で、そして費用は全部総帥が支払いました」

「ネクロベルガー総帥がですか?」

「はい、あの方は大体自腹でサロス陛下のために色々なされてましたよ。そのためサロス皇帝の財布と揶揄する者も居たくらいです」

 

ネクロベルガー総帥は気前のいい人物だと言われているが、この頃からそうだったようだ。この頃は時期的に言えば佐官位だった様だが‥‥‥どうやって費用をねん出したのだろうか?

 

「ああ、何と言いますか‥‥‥話が逸れてしまいましたね」

「いえ、色々な話を聞くのが仕事ですから」

「陛下は何時もは昼近くまで寝ておられるのですが、総帥が来られる日は早起きしましてね、総帥が来るのを今か今かと待っておられるのですよ。その様子がまるで愛しの恋人が来るのを待っている様だと、皆が話してましてね‥‥‥」

「大変仲が宜しかった様で」

「そうですね。初めての友人とでも言いましょうか‥‥‥皇位継承権を剥奪され、離宮での幽閉生活はあのお方を大変苦しめたのです。今までつるんでいた貴族の子弟たちは誰一人来ません出したからね。彼らとしても、陛下が次期皇位継承者のひとりだから付き合ったと言う側面が強かったのです、その事が分かって陛下が人に絶望し人間不信になっる切っ掛けにもなったでしょう。ですが、総帥は逆にそう言った時期に陛下に会いに来ているのです。陛下の喜びはどれほど大きく、その信頼もひとしおだったと思います」

 

私は元使用人の話を聞いて考えさせられた。エレメストで言われる様な生まれながらの悪人の様に描かれるサロス帝では無く、ひとりの人間としての彼の葛藤を知ったのだ。お陰でもっとサロス帝の事を知りたいとも思った。兄弟仲は悪くなかったと言うのでアルデル皇子やパウリナ帝との話も聞きたいとも思ったが、そうなると長くなりそうなので先に進める事とする。あくまで私の目的はゲーディア皇国の誇張が含まれていない正史作りである。あった事をただ淡々と纏めるのが仕事なのだ。と、数日前に経過報告した時に彼奴に言われたのだ。「アンタは歴史に疎いんだろ? だったらただあった事を纏めればいいんだよ。そうすれば早く終わって俺も取材費を節約できるしな」とか言いやがるんだぞ! あの野郎! 面倒だからと取材を俺に押し付けたくせに!

まぁいい、此処からは軍事政権の醜い派閥争いの裏でサロス帝が行った事を紹介する。

まず初めに動いたのは宇宙暦178年3月の事である。

178年の3月と言えば、19日に軍政省庁舎内に爆発物が仕掛けられたと大騒ぎになった時である。その裏で起こったのが「ベリト総督汚職事件」である。軍事政権下で任命されたベリト・シティの総督に汚職の嫌疑が掛けられ、同シティ警察の調査部が調査許可を軍事政権に要請したのである。総督が軍人であるため、警察としては軍部に話を通す必要があったのだ。この件に対して軍部、特に軍政省は調査に協力するため憲兵隊を派遣する旨をベリト・シティ警察に返答したが、軍政省庁舎内爆発物事件が起こった事で、憲兵隊の派遣が見送られる事になったのである。延期となれば総督が汚職の証拠を隠蔽してしまうと、警察は無理を承知で再三協力要請を出したが、無しの礫で「今は無理である」の一点張りだった様だ。

無論、この時点で警察は総督の汚職の証拠をある程度は掴んでいたと思われるが、形だけでも軍の協力を得ていないと、後々この件で軍部と市警が面倒事に陥らないための処置だと思う。

これを憂いたのがサロス帝であり、彼は懇意にしていて丁度ベリト・シティの副総督をしていたネクロベルガー少将に、警察への調査協力を指示、これが功を奏して警察は汚職の証拠をつかみ総督を逮捕、失脚に追い込むのである。

此処で何故サロス帝はこの事件の事を知ったのか? である。

私が思うにサロス帝がネクロベルガーに指示を出したのではなく、ネクロベルガーがサロス帝を動かしたと言うのが真実であると思っている。それを皇帝の判断で解決したとすれば、サロス帝の株も上がる。それが実際の流れだと思っている。

ただ、この事件は軍事政権側が大した事件では無いと判断したのか、あまり大きく取り上げなかった様だ。だが、この事件で大きく飛躍した人物がいる。サリュード・ネクロベルガーだ。彼はこの事件で空席となったベリト・シティ総督に後任となり、中将に昇進したのである。当初は少将のままで総督を続ける予定だったが、ここでもサロス帝がミニッツ軍政総長に昇進を要求し、ミニッツも英雄の息子であるサリュードに恩を売っておこうとでも思ったのか、すんなり昇進が決まった様だ。此処でのサロス帝の行動は自発的だったかもしれない、何故なら元使用人の話からも分かる様に、彼にとって信用できるのはネクロベルガーただ一人だけだったからである。彼を昇進させ、権力を与えて自分の右腕としたいと思うのも不思議ではない。

この一件で自分の意思を通す事が出来た事でサロスは自信を与えた様で、これ以降、何もしなくていいお飾り皇帝だった彼が、静かにだが確実に動き出すのである。

次に動いたのが、派閥争いに決着が付いた同年7月の事である。この時、ベリト・シティ総督のネクロベルガーを大将に昇進させ、近衛軍長官に向かえるとサロス帝は宣言したのである。これは大変な騒動になった。ゲーディア皇国では、近衛軍長官は通例として貴族の四大公(※1)の一族だけが就任する事が出来る地位だからである。

前にも説明したかもしれないが、皇国では近衛軍士官に成れるのは貴族だけで、彼らは成人すると爵位と共に「騎士」の称号を得るのである。それが近衛士官(※2)になる証明書の様なものであり、持っていない平民は「戦士(※3)」と言われる下士官や兵士になるのである。騎士の称号を持たない平民は基本的に士官になる事は出来ないが、大きな働きをした者が稀に騎士の称号を得て士官になる事がある。平民騎士(※4)と言われる彼らは、その働きの大きさから士官貴族から一目置かれる事もある様だが、多くの場合が平民の癖にと見下されている様である。当然ながらその称号はその人物だけのものであり、子供に引き継がれるものではない。そこは男爵の爵位を得た民主院議員と同じである。

当時のネクロベルガーは騎士の称号すら持っておらず、サロス帝は無いなら与えればいいとと言ったのだが、前述したようにネクロベルガーに騎士の称号を与えれば近衛軍長官になれると言うものではない。だが、サロス帝は皇帝の強権を使い、ネクロベルガーを近衛軍長官に就任を強行させてしまう。

最早、当初のお飾り皇帝の影は完全に消えた様に見えるが、これはサロス帝にとっても大きな賭けでもある。なんせ領主貴族は皇帝にとっては最大の盟友であり、それを敵に回すと言う事は皇帝の地位も危うくしかねない行為だからである。幾ら軍事政権がバックに付いているとはいえ、領主貴族たちに比べれば心もとない(絶賛派閥争中)。しかし、ここで皇帝支持側に回る領主貴族が現れる。それが四公のひとりである第3都市領主「ヴァザーゴ」公である。彼の出現はサロス帝に勢いを付ける。

では何故ヴァザーゴ公は皇帝支持に回ったのか? それは簡単な事である。貴族内にも派閥争いがあったからである。

ヴァザーゴ公と対立していたのは第2都市の領主貴族である「アガレス」公である。この2家が貴族最大派閥として皇国成立以来のライバル関係であり、この2家の何方に付くかで他の16候、52伯の領主貴族が分かれていて、日々いがみ合っているのだ。さらにその2派閥の中にも派閥がありと‥‥‥軍事政権の派閥争いより根深く複雑な関係の様だ。ある種の人種には面白く興味深い事だろうが、今は詳しく説明するのはやめて先に進もう。

皇帝支持の理由は、この時の近衛軍長官がアガレス公の弟で、彼は7月事件の際、まんまとクーデター軍に誘き出されて別動隊に首都を落とされた事で、責任を取って辞意するべきだと言われていた。しかし、それ以降もアガレス公の弟は長官で居続けて為、不満に思っていたヴァザーゴ公はこれ幸いとサロスを支持したのである。

一方、派閥争いに勝利して勢いに乗るロイナント上級大将をはじめとする新生軍事政権の上層部は、ネクロベルガーの近衛軍長官就任に賛成する。彼らとしては元々クーデターの時に戦ったのは近衛軍であり、勝利したとは言えども、領主貴族たちの後ろ盾がある近衛軍を未だに従えるまでには至っておらず、彼らを是が非でも抑えたいと思っていたのである。軍の人間であるネクロベルガーが近衛軍長官になれば、完全に近衛軍は軍事政権の指揮下に入る事になる。その手があったかとサロス帝を称賛し、早速、ロイナントはネクロベルガーの大将昇進を容認し、近衛軍に対して圧力を加えたのである。

かくして様々な人物の思惑によって、宇宙歴178年8月16日、ネクロベルガー大将はサロス帝より騎士の称号を授かり、正式に近衛軍長官の地位に付いたのである。これが軍事政権に終焉を迎える事になるとは夢にも思わずに‥‥‥。

 

と言う訳で、次回は軍事政権が終焉を迎え、サロス帝による親政が始まる切っ掛けとなった事件、「ロイナンド事件」を取り扱って行こうと思う。

 

 

 

 

 

※1・四大公、或いは四公。此処では公爵と侯爵が共に「こうしゃく」なので、違いを出すために公爵を敢えて大公と呼称しています。実際の大公と公爵は別ものです。

※2・近衛士官の階級には独自の名称で分けられている。以下はその名称と一般の軍隊階級のどれに相当するかである。

➀上級騎将(大将)

②騎将(中将)

③騎将補(少将)

④上級騎士長(大佐)

⑤一等騎士長(中佐)

⑥二等騎士長(少佐)

⑦上級騎士(大尉)

⑧一等騎士(中尉)

⑨二等騎士(少尉)

※3・戦士は貴族の子弟だけでは近衛軍の人数は賄えないので、広く平民からの募集で集めた兵士の事。

下士官・上級戦士長(曹長)、一等戦士長(軍曹)、二等戦士長(伍長)

②兵士・上級戦士(上等兵)、一等戦士(一等兵)、二等戦士(二等兵

※4・平民でも騎士の称号を得ると騎士になれる。平民騎士(準騎士)と呼ばれる彼らだが、階級としては上級騎士までが関の山である。但し、騎士になればその給与は戦士の比では無いので、騎士になる事に憧れる平民は多い。

因みに平民騎士は階級に「準」が入る事で純粋な貴族と区別されているが、地位は同等である。

例)上級準騎士‥