宇宙歴197年8月26日、第4惑星ゲーディア皇国は第3惑星エレメスト統一連合に対し宣戦布告。両国は武力衝突へと至った。
誰もが数で勝るエレメスト統一連合軍の勝利を予測するも、その予測は覆される事となる。
ゲーディア皇国軍は、新兵器である人型機動兵器「ア・クー」を戦線に投入して数で勝る統一連合軍を圧倒、宇宙での統一連合軍の拠点を制圧していく。
宇宙での戦闘を優位に進めた皇国軍は、その矛先を第3惑星エレメストへと向け、地上への降下侵攻を開始する。宇宙と同じくア・クーの活躍で瞬く間に地上の三分の一を占領した皇国軍であったが、広がりすぎた戦線を維持することが困難となって戦局は膠着状態へと陥り、そのまま1年の歳月が流れたのであった‥‥‥。
「おい、端末見ながら何をブツブツ言ってるんだ?」
「えっ⁉ あ~‥‥‥え~と~‥‥‥ナレーションです」
「はぁ⁉」
「いや、何でもないこっちの話し」
「まあいい、休憩は終わりだ。練習に戻るぞ」
「ええ~、もうちょっと休ませてよ~」
「さっきもそう言ってただろうが! ほら、立て」
「はいはい」
「ハイは1回でいい!」
俺は立ち上がって渋々トレーニングに戻ることにした。
よ、久しぶり、おら悟‥‥‥ネオだ。今俺はナイザ博士とリッチ博士、そして姉貴のラムザの4人で戦乱激しいエレメストからとある研究所に移り住んでいる。
聞いて驚け、その研究所とは俺とラムザが生まれたノゲム・ジ・オームズ博士の元極秘研究所だ。そう、異星転生して訳も分からずなすがままに脱出したあの研究所だ。
あの研究所って爆破されたのでは? と思うかもし得ないが、これが何としぶとく残ってたんだな。勿論、爆破で内部は滅茶苦茶だったのを統一連合軍が新しく作り直したんだよ。まさかここに戻ってくるとは夢にも思わなかったぜ。ま、此処に居たのはせいぜい1、2時間程度だったから何の懐かしさも思い入れも何も感じなかったけどな。
でだ、なぜ俺たちが此処に居るかというと、それはゲーディア皇国軍に対抗するための切り札として俺たちが必要になったってことだ。要は強化兵士である俺たちを強力な兵士に育て上げようってわけだ。
本来、この計画で強化兵士を大量に作り出す予定だったんだろうけど、肝心のマットサイエンティストに裏切られてお釈迦になった。だけど俺たちはいる。だから俺たちを文字通り兵士として訓練して、戦場に送り出そうというおっとろしい考えだ。ま、計画自体は無くなっても、僅かでも強化兵士が居るのなら使わない手はないって事だろうな。
統一連合の庇護の下、何不住なく暮らしていた俺たちには当然拒否権は無いって事だ。3年間はとても平和に暮らせてたのに、やっぱり異世界に飛ばされるってそういうことなんだろうな‥‥‥。
俺がエレメストからこの基地に来て彼是3か月が経つんだけど、兵士になるため様々な軍事教練を受けている。筋トレなんかの体力向上や素手やナイフなどの武器で闘う近接格闘訓練や、拳銃や自動小銃などの小火器の射撃訓練や銃器等の整備などがある。他にも爆破や斥候や応急処置とか様々な軍事教練を一通り受けている。昔の俺だったら頭がこんがらがってただろうけど、今の俺は強化兵士だから1か月もすると教官から教わる事は無くなってしまった。自分の才能が恐ろしいぜ!
と言う訳で、今はラムザとワンツーマンで近接戦闘訓練をしている。美人なお姉さんとトレーニングなんって羨ましいと思うだろうがとんでもない。ラムザは鬼だな鬼! 全く手を抜かないんだ。特に素手での格闘訓練は週1でスパーリングしてるんだけど、今まで勝ったためしがない。顎を打ち抜かれて失神KO、レバーブローで悶絶KO、少しは可愛い弟のために手加減くらいしてくれても罰は当たらないと思うんだけどよ。如何思うよ‥‥‥。
それにしても同じ強化兵士の筈なのに何故勝てないんだ? 格闘技だけじゃない、その他にもナイフや鈍器(スコップとか)での戦闘術や射撃なんかもラムザには勝ったためしがない。流石に自信無くすよ本当に‥‥‥。
やっぱり5歳老けてるからか?
一度本人の前でこれを言ったら口を引き裂かれそうになったけ。その時に「見た目は5歳年上でも、起きたのは一緒だろうが!」って怒られたな。って言っても見た目、体格的にはほぼ同じなんだけどな。身長がホンの1、2㎝ほどラムザが高くて、体重が僅かに俺の方が重いってだけだ。
とはいえ、確かに目覚めたのはほぼ同時なんだよ。あの研究所で俺たちが入っていたカプセル内を満たしていた特殊な溶液、あの液体の影響で俺たちの身体は通常より成長が早いんだ。1年で大体5歳位に身体が成長して、3年、要するに15歳になったらカプセルから出して色々と学習させるんだ。一度カプセルから出ると成長スピードは普通の人間と同じになる。なんだけど、俺は通常よりも早く2年目でナイザ博士にカプセルから出された。それに比べてラムザは通常通り3年目で出たんだ。正確には予定より2ヶ月ほど早く出る事になったらしいんだけどな。ま、変わんないよな。それにしてもこういった荒事は身体的に男の方が得意だと思うんだが‥‥‥強化兵士は男女平等なのか?
でもよ、流石に負けっぱなしじゃあないんだよ。俺でもラムザに勝てるものがある。それがシミュレーターだ。何のシミュレーターかと言うと、勿論ソルジャーの戦闘シミュレーターだ。やはり昔取った杵柄って奴? これに関しては俺の方が一枚も二枚も上手だったわけだ。操縦席は本格的で、あのゲームよりもリアルだ。それに統一連合軍が俺たちに求めているのはパイロット能力なんだ。
実はこの基地にゲーディア皇国からある人物が亡命して来ている。その人物は皇国でのソルジャー開発の第一人者と言われてる大物で、名前を「ガートン・ボーロック」博士と言って、今は統一連合軍でソルジャー開発の中心人物となっている。まだ直接会った事はないんだが、その博士が俺たちのために最強のソルジャーを設計したって訳だ。今は最終調整に入っていて、明日には乗れるって聞かされている。明日が楽しみだぜ。この戦争が始まって以来待ちに待った日だからな‥‥‥。
話を戻すと、俺がこの異星に来てエレメストで生活する様になって3年程経って、平和だったこの世界に戦争が起こった。ま、火種は燻っていたけど、本当にゲーディア皇国が戦争をおっぱじめたんだ。周囲の人々は統一連合軍の勝利を疑っていなかったみたいだけど俺は疑ってたな。なんせあのアニメと同じ展開だったからな。案の定、皇国軍は快進撃を続けそのままエレメストにも攻め込んできた。その時に活躍したのがア・クーって名前のモビ‥‥‥ソルジャー(MAS)っていう人型機動兵器だったんだ。もうあのアニメそのまんまって感じだったな。
あの頃の俺は不謹慎ながら戦争の開始から興奮しっぱなしだった。先にも言った通り皇国軍は人型機動兵器を使ってたからだ。だから俺はそのソルジャーに乗って戦いたいと思った。ゲームとは違う、これは現実でゲームオーバーは死に直結すると、コンテニューは無いってわかってはいるんだけど、それでも乗って操縦したいって思ったんだ。
地球でも戦争があって、兵士同士がドンパチやって、戦車や戦闘機が戦って多くの人々が死んでいる。俺は戦争ゲームはしても戦争自体は御免被りたい。でも、人型機動兵器は別だ。アレに乗って戦ってみたいと心の底から思うんだ。ロボット兵器は男のロマンだと思うんだ。地球じゃあアニメのロボットとかを再現しようとしているけど、実現するか如何か分からない。実際には無理とか兵器として需要がないとか言われてるみたいだけど、こっちじゃもう実現してるんだ。だから如何にも心がそれを欲してしまう。ヴァーチャルじゃなく現実の人型機動兵器に乗ってみたいってね。例え不謹慎と取られても乗ってみたい! 操縦して戦いたいって思うのが男心ってもんだろ?
ただ現実ってのは残酷だ。結局機動兵器の乗れるのは軍人で、しかも統一連合軍には機動兵器がないんだ。一応パワードスーツっていう3、4mくらいの人型兵器はあるみたいだけど、それじゃあ物足りないよな。もし仮に統一連合軍もソルジャーを作ったとしても、俺は中坊で、軍人になるにはあと数年はかかるだろう。結構絶望的だよな。この戦争が1年で終わる(既に1年以上たってるけど‥‥‥)かどうかわからんけど、どのみち俺がソルジャーのパイロットになる頃には戦争は終わっているだろう。そう思うと少し残念な気持ちになってしまう。パイロットになっても戦争が無いんじゃねぇ‥‥‥こればっかりは如何しようもないってわかってるんだけど、でも乗りたい!
「あーあ、どっかに統一連合の作った新型ソルジャーが転がってないかな~。マニュアル片手に操縦しちゃうよ」
なんて思ってたら、統一連合軍が強化兵士である俺とラムザを開発中のソルジャーのパイロットに選んだってわけだ。先も言った通り基地にはコスト度外視した専用のソルジャーも製造してくれてる。アニメと展開は違うが、俺専用の人型機動兵器が開発されるってのは結構興奮する話だよな。だから俺たちは今この基地に来てるんだ。
で、なんで一度爆破したこの基地を直してまでここでソルジャーの開発を? って思うよな。しかもこの基地は宇宙航路から外れたとこにあって、ラグランジュポイントにあるわけじゃないんだ。だから重力の影響とか何やらで宇宙空間を彷徨っている。彷徨ってるって聞くと大丈夫なか? と不安になるけど大丈夫だ。基地にはブースターが装備されているからある程度は場所がずれても元の地点に戻る事は出来る‥‥‥そうだ。でもやっぱり不安だ‥‥‥。
では何故統一連合軍はこんな処にソルジャーの開発基地を作ったかと言うと、無論皇国軍からソルジャー開発計画を隠すためだ。皇国軍が知ったら妨害やデータを盗まれるかもしれないからな、そうならないためにこんな辺鄙な処に基地を置いてるって訳だ。
あと、統一連合内でもこの計画の事を知っているのは、宇宙軍省の上層部と一部の政府高官位しかいないらしい。それ位極秘扱いなんだ。抑々統一連合軍のソルジャー開発計画である「W作戦」は、初戦でア・クーに圧倒された宇宙軍がソルジャーの必要性を痛感したのが始まりだったらしい。だけどそれは宇宙軍だけであって、地上軍はア・クーについて余り脅威には感じていなかったそうだ。だから開発には難色を示し、予算の無駄とまで言ったそうだ(無駄とは何だ無駄とは!)。そのためソルジャー開発は宇宙軍の独断で始める事になったてわけ。
初戦の敗北と主戦場が地上になった事もあって、噂では今現在宇宙軍の予算は削減されて地上軍へ流れ込んでるそうで、新兵器開発は予算面で中々苦労したそうなんだ。それでも何とか開発にまで漕ぎ着けたって訳で、俺は心から宇宙軍の兵器開発部の皆さんに感謝の意を称したい。ご苦労さまです。
それもこれもボーロック博士が亡命したから出来たともいえる。ま、ソルジャーと一緒にするのはアレなんだが、統一連合軍にもパワードスーツと言う人型の兵器がある。だからノウハウがないわけじゃない。鹵獲したア・クーを徹底的に研究しただろうしな。そしてつい1か月前に統一連合軍初のソルジャー「ウォリア」が完成したんだ。
ウォリアは武装を変えることで様々な用途に使える万能ソルジャーで、基本武装のビームライフルとソルジャー用のダガーを装備した「ガン・ウォリア」、両肩にキャノン砲を装備した「キャノン・ウォリア」なんかがある。他にもゴテゴテの実弾兵器で武装した要塞強襲用の「アタック・ウォリア」、狙撃用ビームライフルを装備した「スナイパー・ウォリア」、指揮官用の「コマンダー・ウォリア」とかもあるんだ。機体の基本スペックも皇国軍の主力であるア・クーを超える性能を示していて、あとはこのウォリアが量産すれば統一連合の勝利は間違いない‥‥‥筈である。だからその計画を皇国から隠すために一度爆破したこの基地をソルジャー開発の拠点として作り直したんだ。
実際、統一連合軍はソルジャーのない不利な状況を、鹵獲したア・クーを使って対抗している。特に地上では皇国軍の占領地域内で、鹵獲したア・クーを使っての破壊工作も行われていて、一定の成果も挙げているそうなんだ。だから今なら地上軍でもソルジャーの必要性は高まってると思う。
ただし、この基地は基地としてはかなり小さい部類に入り、場所が場所だけに補給もままならず、って状況だ。だから機体の生産に必要な物資が余りないため生産された機体数も極少数に留まっている。そのためこの基地を守備している機体の多くは未だに鹵獲したア・クーなんだ。抑々この基地にある戦力は可なり少ない。戦闘艦は巡洋艦が3隻と駆逐艦6隻、先ほど言った鹵獲ア・クーが7機、そんで新型のウォリアが4機(ガン2機、キャノン2機)で、俺たちが乗る予定の2機の新型を合わせても、ソルジャーはたったの13機しかないんだ。あと輸送船が何隻かあるが、戦闘には役立たない。なんとも心もとない戦力であるが場所のお陰で皇国軍が攻めてくる事は無い。と思うんだけど、万が一と言う事もありうる。もし見つかって攻められたらひとたまりもないだろうな。
だがもうすぐそれも終わりを迎える。ウォリアと俺たちが乗る機体である「ウィルザ・ヴァンガード」が完成した事で、宇宙軍が俺たちを迎えるべく新造戦艦をこちらに向かわせて来るそうなのだ。俺たちはそれに乗って統一連合軍の宇宙での唯一の拠点であるラクシャス要塞へ行くことになっている。あとはウィルザ・ヴァンガードを駆って戦場で暴れてやるぜ! と威勢のいい事を言ってはいるが、迎えがいつ来るかは未定なんだよな。それまでに機体に慣れる必要がある。一応、明日には機体の最終調整が終わるって聞いてるから、明日遂に俺もソルジャーデビューが出来るって訳だ。だから、こんな何の役にも立たない格闘技のトレーニングなんかやってられないんだよな~。これ言うとまたラムザに怒られるから言わないけど、多分ラムザは俺にシミュレーターで勝てないから他でマウントとってきてるんだよきっと、本当に大人げない姉貴だと思うよ。
「何時までボーっとしてるんだ! 気合い入れて練習しろ!」
「あ、ハイハイ、分かってますよ~」
「ハイは1回でいい!」
「ハーイ」
全く勘弁してほしいぜ‥‥‥とは言うものの、正直格闘技のトレーニングは何だかんだ言って嬉しくもある。なんたってただで女性の身体に組み付けるんだからな。
イヤ、まぁ‥‥‥勿論それが目的じゃないぞ! でもね、俺男の子だからやっぱり女性の神秘には触れたいわけよ。遺伝子操作されて最良の人間として生まれているだけあって、ラムザは完璧に近い外見をしている。髪は黒髪(黒髪好きには最高!)で、当然目鼻立ちも整っていて(アジア系美女が好きな人には最高!)、スタイルも変に強調されてはいなくて、全体的に程よくバランスが取れているんだよ。これが俗にいう黄金比って奴なのかもしれない。しかも、強化兵士って事で全体的に身体は引き締まって筋肉質だけど、当然ムキムキって訳でもない、とっても健康的で最高なボディなんだ!
お、俺、気持ち悪いかな‥‥‥ま、まぁ、気持ち悪いかは置いといて、そんなパーフェクトボディ美女に組み付いて密着するなんて地球にいた頃には想像も出来なかった。
俺、いま幸せです‥‥‥じゃなくて! 物凄く緊張するんだよ。最初なんか唯でさえエロ‥‥‥失礼、魅惑的な身体なのに、さらにスポブラとトランクスだけの露出の高い恰好されてるんだぞ、そんなのと対峙したらそりゃもうぼっ‥‥‥じゃなくて! 本気も出せなくなるって事を言いたいわけ! 密着しようもんなら殴られてもいないのに鼻血が出るってもんだ。
一度あまりにも勝てないからセクハラ攻撃で勝とうとしたら、逆効果でいつも以上にボッコボコにされたっけ。自業自得なんだけどあの時は殺されると思ったな。今思い返すだけでも震えがくるぜ‥‥‥。
だけど人間て慣れる生き物だとつくづく思うよ。そうやって毎週スパーリングをやってると、そういった邪な気持ちが薄らいでくるんだ。それよりも、負けた悔しさから次こそはと思ってトレーニングにも熱が入るってなもんだ。だけど勝てないんだよなぁ~。
だが今日こそ勝つ!
「よし、勝負だラムザ!」
「へぇ~、今日はいつになく積極的じゃないか」
「何時までも女に負け続けてたら男が廃るってもんだ!」
「そういう偏見は持たない方がいいぜ、じゃあリングに上がりな」
俺は今日こそラムザに勝つと意気揚々とリングに上がったものの、結局は返り討ちにあって失神KOしてしまった。良い処まではいってたんだぜ、首相撲からの膝蹴りがラムザの鳩尾に入って悶絶させたんだ。あと少し、そうあと少しで勝てるって思ってつい気が逸っちまって不用意に近づいたのがダメだった。止めを刺そうとして逆にカウンターを顎に食らってハイ、アウト!
クッソ~、次こそ勝つからな~! 覚えてろよ~!!(でも失神KOした後、気が付くまでラムザに膝枕されたのはよかったな、うん)
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