怠惰に創作

細々と小説の様なものを創作しています。設定など思い付いたように変更しますので、ご容赦ください。

とある記者の取材録3

第4惑星第1衛星「ゾディ・アスタ」の宇宙港から俺は小型シャトルに乗り換える。ここからは小型シャトルに乗ってそれぞれの都市に行くことになる。俺が選んだのは第1都市「バルア・シティ」だ。

ゲーディア皇国は第4惑星地表面にある73の宇宙都市の連合国家? みたいなものである。それぞれの都市には大体3000万前後の人々が住んでいて、結構な過密都市らしい。総人口は20億7920万2428人(宇宙暦192年調べ)いる。

皇国のトップは第73都市で首都の「ミシャンドラ・シティ」にる皇帝だが、各都市に領主貴族と呼ばれる上級貴族がいて、彼らが其々の都市を統治している。と、まぁ、ゲーディア皇国の大まかな説明はこんな感じだろうか。

大まか過ぎるか? まぁ、細かい所はオイオイ記事にしよう。

俺は都市部と少し離れているブエール宇宙港に入り、荷物をもって専用トレインで都市部に行く。昔ならその都度、入国検査なりがあったらしいが、今ではそういった事もなくスムーズに行くことが出来る。

トレインを降りて駅から出ると、そこは高層ビルが立ち並ぶ大都市が広がる地表層部である。この都市は円形のドーム型の都市で、地表層部と4層からなる地下部になっている。中心には都市を支配する領主貴族の「バルア大公」の屋敷兼行政府であるタワービルが聳え立っている。この行政府でもある中央タワービルと、十数本のタワービルがドームの天井を支える柱の役割も兼ねている。

それと、皇国には連合から毎年数百~数千人ほどの入国者がいるらしい。俺なんかは、あんな「法律」がある国によく入居するものだと思ってしまうのだが……。まぁ、その理由も分からない訳では無い。連合は4年戦争に勝ったとはいえ、その後も連合からの独立を目論む旧国家再興(分離)主義者たちのテロが相次いで起こってもいるため、地域によっては結構治安が悪い。まぁ、治安が悪いのは、一部の地域に限定されているのだが、そう言った処から逃げてきた人たちが移住してくるのだ。要するに移民を受け入れているって事だ。

取りあえず俺は頼んでおいたガイドの人を待つ間、取材の練習がてら到着したことを伝える音声を取ることにした。なんせ、クビになって以来、酒浸りで過ごしていたから、鈍っているといけないからな。

「宇宙歴193年10月1日。現在の時刻は11時15分。私、ブレイズ・オルパーソンは第4惑星皇国の旧首都「バルア・シティ」に来ています。ここはかつてエレメスト統一連合第4惑星行政府の首都であり、初期のゲーディア皇国首都でもありました。しかし、宇宙暦158年1月6日、新首都として「ミシャンドラ・シティ」の建設が開始され、15年後の宇宙暦173年の完成をもって首都としての機能を「ミシャンドラ」シティに委譲したのです。ですが、それは行政府としての機能を委譲しただけであり、その後も文化、経済においては未だに「バルア」シティが皇国の中心地なのです。

音声での記録を取りつつ俺は周囲をカメラに収める。

「おの~、もしかしてオルパ~ソンさんですか?」

周囲をカメラで撮っていると、背後から男性に名前を呼ばれたので振り返る。勿論、皇国に俺の知り合いはいない。そこに立っていたのは、眼鏡型端末をかけ、口ひげを生やした小柄で小太りの中年男性だった。

「もしかしてガイドの人?」

「は~いそうです。私、今回オルパ~ソンさんが滞在中のガイドを観光会社より委託されました。チ~・ハンと申します」

「ガイドを委託?」

「は~いそうです。観光会社としましては、オルパ~ソンさんの様な滞在期間の長期或いは未定な方に対しては、委託されたガイドが担当することになっております」

「そうですか、よろしくお願いします」

「は~い」

俺は独特な話し方をするガイドのチーさんと握手する。すると彼の背後から年の頃は14、5歳位の女の子が出て来て俺の荷物を持ち始める。

「こちら娘のチヤ・ハンともうします」

「む、娘のチャーハン?」

「いえ、チヤ・ハンでございます」

「チーさんとチヤさんですか……?」

「さようです。ささ、彼方に車を用意していますのでどうぞ」

「どうぞ!」

父親に続いて娘にも元気よく車に案内された。結構ボロ‥‥‥味のある車で、俺はそれに乗り込む。嘗て運転席と呼ばれていた場所にチーさんが、そして助手席と呼ばれていた場所に娘のチヤ(言いにくい名前だな💦)さんが座る。とりあえず俺は滞在中に使うホテル探しをしてもらう事にした。

予約してなかったんかい! って言う突っ込みは無しだぜ。彼奴に第4惑星に行く途中の宿泊施設は決まっていると言われたから、てっきり皇国での宿泊も決まっていると思ったんだ! 悪いか!

「ここなんかどうでしょうか?」

車の中ではチーさんがホテルの候補名を上げ、娘さんが端末からそのホテルの情報を俺に見せてくれる。なかなかの連係プレイである。

流石は旧首都と言った所だろうか、高級ホテルがそろっている。が、今までゴミ溜めみたいな部屋で暮らしていた俺にとっては、キレイで高級な調度品があるような部屋は逆に落ち着かなく感じ、結局は無難で平均的なホテルに泊まることにした。これが貧乏人の性と言うものなのだろうか‥‥‥。

ホテルが決まると、チーさんが行き先を自動運転車のAIに伝え、車はホテルへと向かう。ホテルに到着し、俺はチーさんと別れる。取材は明日からにして、今日はホテルで休むことにした。

ふと周囲を見ると、野良犬が歩いている事に気付く。

「野良犬? イヤあれはロボット犬か……」

宇宙都市には人間以外に生きた動物はいない。まぁ、完全にいないとは言い切れ無いがな。例えば第3惑星からの貨物にネズミやら虫やら潜んでいるかもしれない。ただ衛生上の問題という点で、生きた動物を飼うのは宇宙都市では禁止されている。というのが基本なのだが、例外は何処にでもあるもので、飼えない事も無い。だだし、検査などの面倒事が多いし、費用も馬鹿にならないくらい高額である。ま金持ちの道楽と言う事だな。なので庶民は本物そっくにり作られたロボット動物が代用となっている。あの野良犬もその類だろう。

「イヤ、野良犬じゃないな。誰かが放し飼いにしているのかな。本物と違って ロボットだから誰彼と噛みついたり吠えたりしないからな~」

「いえ、違いますよ。あれは警察犬です」

背後から声を掛けられたので振り返ると、そこにホテルのベルボーイが立っていた。

「当ホテルにようこそ、先程予約されたオルパーソンさんですね」

「あ、はい……って、警察犬?」

俺から荷物を受け取りつつベルボーイはにこやかな笑顔で質問に答える。

「はい、この街で歩いている犬型のロボットは全て警察犬です。あちらや此方に並んでいる街灯がありますでしょ。あれは全部防犯カメラです」

「なっ!? 防犯カメラ? あのズラーッと並んでいる街灯全部に!? 独裁政権特有の監視カメラみたいなものか? ……あ!? イヤ……」

俺は思わずハッとする。独裁政権下でこんなこと言ったら何があるか‥‥‥怖い。着いて早々ピンチである。しかし、ベルボーイは営業スマイルを崩すことなく、俺の反応に応対する。

「外国のお客様はよくそう言った反応をされますよ。ですが、あくまで防犯です。何かありましたら犯人逮捕の証拠になりますし、冤罪も極力回避できますからね。あと、カメラに怪しい行動をする人物が映りますと、近くにいる警察犬に情報が伝達されて、彼らが現場に行ってその人物に警告の為に吠える様になっているんですよ。それで相手が止めればお咎めなしです。まぁ、警告を無視する人はいないでしょが、無視して違法行為を続けると当然警察が来ます」

「なるほど……」

俺らからすると、防犯カメラと警察犬でガッチガチに見張られているようにしか思えないのだが、ベルボーイが言うように、犯人の早期逮捕や冤罪回避に一役買っているという事は一応理解できる。

果たしてこのまま取材はちゃんとできるのか? 俺は一抹の不安を抱えつつホテルにチェックインする。

俺はベルボーイに部屋まで案内され、荷物を置いた彼にチップを渡す。

「ありがとうございます。何か御用がありましたら内線で及びください。ここはルームキーパーではございませんので」

「分かったよ」

俺は心の中でだから選んだんだと呟く。ルームキーパーとは、嘗てはホテルの室内の清掃や備品の補充などをしていた人たちの事を言うのだが、今ではAIによるルーム管理システムの事を言う。いろいろと対応してはくれるが、俺は静かになりたいので無い部屋を取った。まぁ、スリープモードにすればいいのだが、有っても使う気が無いので要らないし、料金も高くなるし、大体独裁国家専制国家か?)で、そういった機能のある部屋に泊まりたくはない。と言うのが本音である。

ひとりになると、取り合えず今日から暫く自分の住みかとなる部屋を見回す。ひとり部屋でシングルベッドにクローゼットに机に椅子、トイレとシャワールーム。シンプルではあるがとても綺麗な部屋である。

「さてと、明日からの取材のためにざっとこの国の歴史でもまとめてみるか」

俺は椅子に座って端末を開き、この国の簡単な歴史をまとめる作業に取り掛かる。