俺はこの国の歴史を記するにあたり、まずはこの国の皇帝とその時起った物事を中心に歴史を書くことにした。まぁ、当然と言えば当然だな。
最初は当然ながら第4惑星ゲーディア皇国初代皇帝「ウルギア・ソロモス」である。
このウルギア帝と切っても切れない出来事が「4年戦争」である。この4年戦争が無ければ、ゲーディア皇国が建国される事も、彼が皇帝になる事も無かっただろう。それくらい重要な出来事なのだ。
下はチョットしたこの国の起こりと4年戦争時代を年表にしたものだ。
宇宙暦152年
2月2日・アフラ解放戦線が、エレメスト統一連合に対して宣戦を布告。後に4年戦争と言われる宇宙戦争が勃発する。
3日・4年戦争の勃発を機に、当時のエレメスト統一連合第4惑星行政府長官だった「ウルギア・ソロモス」が、連合からの独立を主張する。この主張によって、第4惑星行政府内で独立(ソロモス)派と、独立に懸念を示す反独立(連合)派との対立構造が起こり、激しい論争を繰り返すことになる。
15日・独立派で、エレメスト統一連合第4惑星駐留艦隊司令長官「ドレイク・ネクロベルガー」 が、自らの艦隊と共に軍事クーデターを起こして首都「バルア・シティ」を占領する。「ソロモス事変」
26日・抵抗し続けていた反独立派の第4惑星駐留軍が独立派に降伏。
3月1日・ウルギア・ソロモスが、ゲーディア皇国建国を宣言し、自ら初代「皇帝」となる。
5月8日・アフラ解放戦線指導者「アリグナク・チェイスロア」が来日する。「バルア会談」
会談の結果、ゲーディア皇国はアフラ解放戦線に資金・資源の援助、軍事技術の提供を約束するも、アリグナクが強く求めた軍の派遣は拒否する。この決定に「解放戦線に軍事的にも協力すべし!」と言う市民レベルでの反発が起こり、民間で義勇軍の結成が叫ばれる。
6月1日・結集した義勇軍約5千名が、アフラ解放戦線に合流するため月へと向かう。以後定期的に義勇兵が月へと向かうが、これを皇国政府は黙認する。
宇宙暦153年
皇国的には特に大きな動きは無く、国内行政の充実を図る。
宇宙暦154年
皇国的には特に大きな動きは無く、国内行政の充実を図る。
宇宙暦155年
4月・皇国、解放戦線にレーダーや長距離誘導兵器等を無力化するジャミング技術を提供する。
10月・皇国、自国民義勇兵の本国への帰還命令を発する。
12月1日・皇国、アフラ解放戦線に宣戦を布告する。
28日・皇国宇宙艦隊(元エレメスト統一連合第4惑星駐留艦隊)と解放戦線宇宙艦隊との戦闘が開始され、ゲーディア皇国宇宙艦隊が勝利する。「ホール・ワン宙域戦」
宇宙暦156年
1月4日・解放戦線内でエレメント派と呼ばれる一派がクーデターを起こす。そして彼らがアフラ新政府を樹立する。「アフラ事変」
15日・アフラ新政府が、エレメスト統一連合に対して無条件降伏して4年戦争が終結する。
16日・エレメスト統一連合政府により、皇国の独立自治権が認められる。一般的には此処から「ゲーディア皇国」の樹立とされる。そのため、1月16日を独立記念日として、本来独立を宣言した日である3月1日を独立宣言記念日としている。(ただし、独立記念日はあくまでも3月1日だと主張する者も多く、1月16日派と3月1日派とで論争が起こっている)
と、こんな感じかな。宇宙暦153年と154年が寂しいが、特に大きな出来事も無く至って平和だったのだ。(まぁ、平和という言葉を使ってもいいものかは疑問ではあるが……)
とにかく、エレメスト統一連合とアフラ解放戦線の戦争がメインで、大きな動きを見せることなく、ジッとしていた皇国は大した話題にもならなかったのだろう。と言うか、余り注目されずにいたのが逆に怖いとも言えるが……。
翌朝、俺はホテルを出てガイドのハンさん親子と共に取材に出る。色々とシティの人に話を聞くと、大体の人は彼の事を尊敬している様だ。これが本心からなのか、そこら中にある監視……防犯カメラや警察犬を気にしてなのかは分からないが……。
だが、俺はとしてはチョット拍子抜けした気分である。取材すると殆どの人が快く受けてくれた。良いことなのだが、この国は皇帝がトップな専制国家なので、俺の予想だともっと周囲を気にして取材拒否されると思っていたので、結構普通に取材を受けてくれて驚かされた。
ここからはウルキア帝の生い立ちを軽く紹介する。
「ウルキア・ソロモス」は宇宙歴100年4月6日に、第3惑星にある第44※メガシティ「ロークフォート」でソロモス家の次男として生まれた。
家族構成は両親と兄、弟と妹の6人家族で、父親は市議会議員をしていて、ロークフォートではチョットした名士だったそうだ。
そして彼は30歳の時に父と同じく市議会議員となり、その3年後の宇宙暦133年に「テリーサ」という彼の私設秘書をしていた女性と結婚。2年後の135年に長子「アルデル」が生まれ、138年には次男「サロス」、140年には長女「パウリナ」が生まれている。
そしてパウリナが生まれた年に、彼は※エレメスト統一連合議会議員にロークフォート代表として選出される。
議会議員となった彼はやり手の政治家としてメキメキと頭角を現していくが、宇宙暦144年、突如、第4惑星行政府の長官となる。
当時、統一連合議員にとって、第3惑星以外の場所に行かされる事は左遷と捉えられており、更に第3惑星に近い月(アフラ)ならともかく、他の惑星に行かされることはもう議員として連合の中枢に戻る事が出来ないことを意味し、それ故に派閥抗争に敗れたのだとか、ある不祥事を隠蔽する代わりに飛ばされた等の噂うわさが飛び交った。その一方で自ら赴いたとも言われていて、真相は定かではない。
宇宙暦144年3月。彼は家族と、当時居候状態だった弟のアグリスを連れて第4惑星に行く。第4惑星行政長官として8年の歳月が経とうとしていた時に、彼の運命を変える事件が起こる。4年戦争である。
だが、ウルキアはその数年前から第4惑星をひとつの国家として独立させようとしていた節がある。だが彼は、月の様に暴動や武力行使では無く、話し合いで解決しようとしていたようで、開戦の報告を受けた際に「足を引っ張ってくれる……」と呟いたと当時の秘書官が史記に残している。
だがこの後、彼は躊躇する事無く方針を180°変更してしまう。彼と行動を共にしていた者にとっては可なり驚いた事だろう……。
こうして宇宙暦152年2月3日、急遽開かれた第4惑星評議会で、彼は統一連合からの独立を議題にし、自らの独立論を公表したのである。
この後は4年戦争という未曽有の大惨事に隠れて何をしていたのか正直分からない。資料が無いし、有ったとしても俺の様な者がおいそれと見ることも出来ないだろう。精々図書館での当時の電子記事に目を通すくらいが関の山である。無論ハンさんに言って図書館に連れて行ってもらって記事を見たのは見たが……。当時の事件記事やらその日に起きた行事だので平和な時代の新聞と変わらないものだった。 ただ、数日遅れではあるが4年戦争の記事が載っているのが時代を感じさせるくらいだろうか。
そんな戦争に「我関せず」と言った態度を取っていたこの国が、遂に動き出すことになるのだ。それは宇宙暦155年12月1日、それまで解放戦線を支援していた筈のゲーディア皇国が彼らに宣戦布告したのである……。
【用語】
※「メガシティ」・宇宙暦以前の旧暦時代に自然保護と、食糧問題対策のための農地開発に対応すべく、第3惑星エレメスト統一連合が行ったプロジェクト「メガ・シティ計画」によって、世界100ヶ所に作られた大都市。
多くの人々を大都市に集中して住まわせることで、空いた土地に木々を植えたり、農地利用する事で両方の問題を一気に解決できると推進された計画である。
当初は全ての人をメガシティに住まわせる計画だったが、全ての人を受け入れるには100都市では不十分であることが分かり、嘗ての国の首都や経済発展していた大都市もそのまま使う事になる。そのため、第3惑星ではメガシティ、シティ(嘗ての国の首都や大都市)タウン(統一連合に一部自治権を委託された街)と言う風に分かれている。
※「エレメスト統一連合議会議員」・第3惑星の各都市、コロニー群の各コロニー、月面都市群の各都市から代表者1名が選出されて、第3惑星エレメスト統一連合政府首都「メガトゥロス」に集まり、統一連合評議会を開いて第3惑星圏全体の行政を司る議員の名称。