【アンリ・マーユ会戦(宇宙暦197年8月26日)】
第4惑星ゲーディア皇国は第3惑星エレメスト統一連合に対して宣戦布告、両国の間で戦端が開かれる。
統一連合軍は、皇国に最後通牒をつきつけると共に、宇宙艦隊の半数である6個艦隊で編制された遠征艦隊を脅しの意味で派遣しており、皇国宇宙軍の拠点でもある第2衛星「アンリ・マーユ」要塞に接近していた。
迫りくる遠征艦隊に対し、皇国軍が行ったのは岩石による攻撃だった。皇国軍は、統一連合軍が遠征艦隊を編成しているとの情報をキャッチするとすぐさまアンリ・マーユ周辺に無数の岩石を設置する。そして開戦となると遠征艦隊に向かて次々と発射し、岩石を一種のミサイルとして使用したのである。遠征艦隊は迫りくる岩石ミサイルを粉砕しようと主砲の一斉放射を行う。しかし、この岩石ミサイルは統一連合の目を欺く一種のブラフであった。実際はただのダミーバルーンであり、中にはビーム兵器を無力化させる【アンチ・ビーム・パウダー「Anti・Beam・Powder(ABP)」】が詰まっていたのだ。そうとは知らずに主砲の一斉射撃を行ったと遠征艦隊は、自らABPを周囲に散布する形でビーム兵器が使用不可能になる。この事態に慌てて岩石ミサイルへの攻撃を止めた遠征艦隊であったものの時すでに遅く、しかもダミーバルーンは艦隊に近付くと自動的に破裂する時限式で、戦闘宙域は高濃度のABPが広がる事態となってしまう。
開戦と共に強力なジャミングとABPによって精密誘導兵器とビーム兵器が使用不可になった事は由々しき事態ではあるものの、それは皇国軍にとっても状況は同じで、全く艦隊を出撃させない事もあってか、遠征艦隊は事前の作戦通りにアンリ・マーユ要塞へと進撃する。
彼らの作戦はアンリ・マーユ要塞を守る皇国艦隊を蹴散らしつつ要塞に接近し、歩兵部隊を侵入させて要塞内を占領する揚陸作戦である。当初はこの状況に面食らってしまった遠征艦隊だったが、敵が艦隊を出撃させて来ない、要塞からの砲撃も自ら撒いたABPのお陰で出来ないと、状況的に揚陸作戦にはむしろ好都合だと基地に取りつくため前進を加速させる。
相変わらずダミーバルーンを発射する皇国に対し、遠征艦隊それらを無視するようになっていた。むしろバルーンを一々回避するのが面倒だと体当たりする艦も出てくる始末だった。しかし、この行為が彼らに思わぬ事態をもたらす事になる。この頃になると皇国はダミーバルーンだけではなく、本物の岩石ミサイルも飛ばしていて、そうとも知らずに体当たりした戦闘艦が被害にあうようになったのだ。この事態に遠征艦隊司令部は全ての岩石を回避するよう厳命が下る。しかし此れは、皇国の思惑に完全に載せられる形となったのである。
このタイミングで皇国軍は予てより開発していた新兵器【機動装甲兵「マヌーバ・アーマー・ソルジャー(Maneuver・Armor・Soldier)」】を実戦投入する。この人の形を模した兵器、通称「ソルジャー(MAS)」は、その機動性と武装の変更で数多くの作戦に対応できる汎用性を持っており、数に劣る皇国の切り札として開発された兵器である。
皇国はそのソルジャー1個小隊をダミー岩石内に潜ませて、遠征艦隊に向けて大量射出したのだ。統一連合としては、まさかこの中に新兵器が潜んでいるなど夢にも思わず、そのまま回避した事により、彼らを遠征艦隊内部にまで引き込む事になる。艦隊の奥深くまで引き込まれ、頃合いを見てダミー岩石をパージし一斉に外に放たれたソルジャー部隊は、目に付く艦船を手当たり次第に攻撃する。
殆どの場合、戦闘は前方から来る敵との戦いである。あとは奇襲に備えて後方や側面からの敵に警戒するものである。宇宙空間という状況下では、上方と下方にも注意を払っているだろう。だが、部隊の内側にまで意識を払っている部隊はいないものである。自分の隣に行き成り敵が現れる事など瞬間移動でもしない限り無理であり、そんな事が現実には起こりえないからである。だが、この時の遠征艦隊は正にそれが現実になったような錯覚を覚えたかもしれない。突然自分たちの周囲に敵が出現して攻撃して来たからである。当然この事態に遠征艦隊はパニックに陥る。しかも、主要武器も使えない状況で唯一使える武器は対空防護用火器である「レーザー機銃」だけであった。対応武器としては丁度良かったのだが、しかしソルジャーの機動力に翻弄され、次々と撃沈されて行く。さらに悪い事に、艦隊内部で戦闘が起こった事で、本来なら周囲の戦闘艦に守られている筈の旗艦が早々に撃沈されるという事態が起こったのだ。艦隊司令官の相次ぐ戦死は更なるパニックを呼び、たった数時間の戦闘で遠征艦隊は4名の艦隊司令官と4割以上の艦艇を失う大敗を喫したのだった‥‥‥。
【ヘキサス撤退「オペレーション・イーグル※1」(宇宙暦197年8月27日~9月12日)】
遠征艦隊の敗北の報に統一連合軍司令部は驚愕する。その一方で、残存する遠征艦隊は宇宙ステーション「ヘキサス」宙域での決戦を想定して急遽損傷艦艇の修理と補給を急がせる。アンリ・マーユからヘキサスまでは、通常の高速旅客シャトルならまる1日、集団で行動する艦隊であっても2日も掛からない距離である。そのため無傷の艦や損傷軽微の艦はヘキサスの防衛に当たりつつ、損傷艦の修理を急がせる事で出来る限り多くの艦艇を戦線に復帰させようとしたのだ。そしてさらに本国へ増援の艦隊の派遣を要請する。
だが、遠征艦隊の要請にエレメスト統一連合軍司令部は、艦隊のアフラ基地への即時撤退を命令する。圧倒的な艦艇数を誇る遠征艦隊が負けるはずがないという慢心からか、統一連合軍は追加で艦隊を派遣する準備が出来ておらず、今から準備しても間に合わないと判断しためである。そのため確実性を取った司令部は遠征艦隊を撤退させてホールを閉鎖する事で、皇国軍が第3惑星圏に侵攻する時間を稼ごうとしたのである。そして撤退した遠征艦隊の残存艦艇と、本国に残っている艦隊で皇国との雌雄を決するというのが司令部の戦略だった。
宇宙ステーション「ヘキサス」は、小型の資源衛星を中心に6基の円筒形の人工物が伸びている独特の形状をした宇宙テーションである。そして6基の構造物の1基が軍港と将兵の生活区となっていて、その他の構造物は居住区になっている。居住区は構造物ごとに1区~5区に分かれていて、約500万人ほどの民間人が生活していた。
ヘキサスのそもそもの建設理由は、第4惑星開拓時代の労働者の居住区で、その役目を終えた後は暫く放置されていたのだが、第4惑星がゲーディア皇国として独立すると、その監視に当たるために軍事拠点として改修されたのである。それと同時に居住区の補修整備も行い、軍人相手の商売人を中心に民間人が居住するようになって今に至る。
そして宇宙ドック兼軍の居住区である第6区には、常に2個艦隊が駐留していて、以前ならばこれだけでも皇国宇宙軍に対処出来る戦力であった。ただこのヘキサスはあくまで居住用の宇宙ステーションであり、防衛には駐留艦隊に依存していると言って良く、要塞としての機能は皆無といってよかった。この事も統一連合軍がヘキサスでの対決を避けた理由でもある。
そんな遠征艦隊の撤退であるが、これはあくまでも軍内だけの話であってヘキサスの市民が知る由も無かった。だが、ヘキサス市民たちは遠征艦隊が大敗した事で、皇国軍がヘキサスに攻めて来ると大騒ぎになっていたのだ。しかも、何故か遠征艦隊がアフラに撤退するという噂も早々に広まり、市民は統一連合軍が自分たちを見捨てたと憤り暴動を起こすまでに至ったのである。
この市民の暴動を遠征艦隊は完全に無視して撤退準備を急ぎ、市民の対応はヘキサス市長の「ハマーナ・モニノ」に丸投げされたのである。怒れる市民に対してモニノ市長は脱出のために航宙会社のシャトルや運送業者の輸送船、「運び屋※2」の輸送船などを出来るだけ掻き集め、これでヘキサスから脱出したい市民を乗せて遠征艦隊と共にアフラへの避難を進めたのである。これによって一応の鎮静化は見られたが、今度は宇宙港へ向かう市民の列によって大渋滞が起こる事態となり、引き続きヘキサスは大きな混乱に見舞われたのだった。
一方の皇国軍はというと、撤退した遠征艦隊を追撃するための追撃艦隊「所属艦隊・第1艦隊、第2艦隊、第3艦隊」が発進したのだが、そのときには既にアンリ・マーユ会戦から2週間もたった9月9日の事だった。
これはヘキサスが防衛に向いていないため、統一連合軍は残存艦隊をアフラに撤退させると読んで彼らが撤退するまで待っていたのである。これによって皇国軍はヘキサスを無血占領しようとしたのだ。
これは事前の計画ではあったものの、追撃艦隊総司令長官であり、ゲーディア皇国宇宙軍総司令長官兼第1艦隊司令長官の「ビリィ・キャロムヤード」大将は、作戦を立案した皇国参謀本部に対して「兵は勝つ事を貴び、久しきを貴ばず」という兵法の言葉を引用し、勝利のために迅速に行動するべきだと苦言を呈す。彼としては、直ぐにでも追撃を開始して統一連合軍が援軍を派遣する前にヘキサスで遠征艦隊を壊滅させ、この戦果を持って統一連合に対して有利な条件で講和を結ぶべきだと主張したのだ。
とは言え、皇国参謀本部には別の思惑もあり、彼の提案は避けられたのである。
そんな皇国軍の追撃艦隊のミッションは3段階に分かれていた。その第1段階「オペレーション・イーグル」は、名前とは裏腹に可なりの鈍重な作戦であった。目的上しょうがないとはいえ、まず発動までに2週間を要し、アンリ・マーユを出撃した後も可なりの低速移動でヘキサスを目指したからだ。ただ皇国軍の予測は的中し、統一連合軍はヘキサスの放棄を決定して遠征艦隊を撤退させ、それに追随するヘキサス市民の避難船団と共にホール・ツーへと向かったのである。
遠征艦隊の撤退は、すぐさま追撃艦隊に知らされ、これを受けて追撃艦隊は速度を上げてヘキサスへ向かい予定通り無血占領する。そして追撃艦隊自体はヘキサスへ占領部隊を送るとすぐさまホール・ツーへと向かう。しかし、この時には既に遠征艦隊と避難船団はホール・ツーからホール・ワンへと抜けており、ホールは閉じられた後であった。
9月12日、追撃艦隊は既に封じられたホール・ツーを占領する。だが、ホール・ワンが閉じている事でまったくの無用の長物と化したホール・ツーだったが、既に皇国軍は作戦の第2段階「オペレーション・アルバトロス」を発動していたのだった‥‥‥。
【ホール・ワン襲撃事件「オペレーション・アルバトロス」(宇宙暦197年9月11日~12日)】
残存艦隊と避難船団の一団は、ホール・ツーからホール・ワンへ抜けて一路アフラへ向かっていた。そんな船団の中にあって、一際異彩を放つ輸送船があった。その輸送船は皇国軍が使っていた旧式のズローヴァ型輸送艦の払い下げを改修したもので、特に目を引くのは船体にアニメの美少女キャラクターをラッピングしている事である。
この一件場違いなラッピング輸送艦はヘキサスの有力者であり、モニノ市長の支援者でもある「ガイ・カレロ」によって用意された特別な輸送艦で、彼が懇意にしていた人物で避難を願い出た者のために用意されたものであった。ただこの輸送艦、派手な見た目のお陰で脱出に不安を覚える避難民からは好印象を持ってもらえたようで、窓を覗いてその輸送艦を目にする事で、避難民にチョットした安堵感を与えていた。ただ一部の避難民や遠征艦隊の将兵には不謹慎と捉える者も居たようである。
そして避難船団がアフラに近付くにつれてその輸送艦は目撃されなくなる。しかし、戦争を避けてアフラへの一時避難をした者達には、その後の避難生活に不安を覚える者も多く、誰もその事を気にする者はいなかったのである。
そんな中、その輸送艦は一団から離れて漂っていた。エンジントラブルを起こして避難船団に付いて行けなくなったのだ。そこに殿を務めていた第12艦隊が現れ救助すると打診したものの、トラブったラッピング輸送艦はそれを断る。理由としては第12艦隊の手を煩わせたくないという事と、既に彼らは第3惑星圏内に居るため危険はないというのだ。第12艦隊も速やかにアフラ基地に寄港したいという事もあって、輸送艦の言い分を聞いて彼らを置いて去って行く。しかし、これこそがラッピング輸送艦の狙いであった。船団は頃合いを見計らって方向転換し、一路ホール・ワンへと戻って行ったのある。
ホールまたはゲートと呼ばれる巨大なリング状の建造物は、一種の転送装置である。エレメストの天才科学者「グラッフ・ホールマン」によって開発され、二つのホール同士がリンクする事で、そのホール間ならば如何に遠距離であっても瞬時に往来する事が出来きるのである。しかし、一方が起動したとしてもリンク相手が起動していなければ繋がらない仕組みのため、遠征艦隊がホール・ワンを抜けた後に閉鎖(機能停止)するだけで、皇国軍がホール・ツーを占領したとしても使用する事が出来ないのである。そのため皇国軍はホール・ツーだけではなくホール・ワンも占領せねばならず、そのための作戦が「オペレーション・アルバトロス」である。
ラッピング輸送艦はそのための部隊で、事前に避難船団に混じってホールを抜けて第3惑星圏に行き、エンジントラブルを装って避難船団から離れてホール・ワンを急襲するのが彼らの任務であった。順調に作戦を遂行したラッピング輸送艦はホール・ワンに近付くとすぐさまジャミングでホール・ワンの通信を阻害し、輸送艦からソルジャー部隊を出撃させる。
あっと言う間にソルジャーに包囲されたホール・ワンは呆気なく降伏。皇国軍はすぐさまホール・ワンとホール・ツーとをリンクさせ、ホール・ツー周辺で待機していた追撃艦隊を第3惑星圏へと引き込む事に成功したのである。
そして皇国軍は、作戦の最終段階である「オペレーション・コンドル」を発動するのだった‥‥‥。
【第1次アフラ会戦「オペレーション・コンドル」(宇宙暦197年9月12日~14日)】
9月12日9:30 統一連合軍のアフラ基地では、突然ホール・ワン周辺に強力なジャミングが掛かった事を不思議に思い調査のための偵察艇を派遣する。そして約5時間後、派遣された偵察艇乗員が目にしたのは、眼前の宇宙空間に広がるゲーディア皇国軍の大艦隊だった。
偵察艇はすぐさまアフラ基地に事態を報告する。この知らせに皇国軍が来るのは早くても1ヶ月半から2ヶ月後だと思っていた統一連合軍は驚愕する。そしてすぐさま駐留艦隊と無傷の残存艦隊を合わせた「迎撃艦隊」を向かわせたのだ。
一方エレメスト本星の司令部では、皇国軍のアフラ強襲の報を受けて戦略が破城してしまった事で場当たり的で不明瞭な命令が二転三転するようになり、司令部がいかに混乱状態になったかを露呈する結果となる。
そんな中、いち早くアフラ基地救援に動いたのが、L1コロニー群の防衛を担う宇宙要塞「アーシャ」である。この時点でアーシャに駐留していた唯一の艦隊である第7艦隊が出撃準備に取り掛かる。それとは反対に、L2コロニー群の防衛を担う宇宙要塞「アル・マティ」は、駐留している第3艦隊を派遣するとL2を守る防衛艦隊が居なくなるとアフラ救援を渋り、さらにL3コロニー群を防衛する宇宙要塞「ラクシャス」に至っては、2個艦隊「第4、第8艦隊」を保有しながらも、位置的にアフラとは正反対の場所にあるため艦隊の派遣する素振りすらも見せず、各宇宙要塞の行動がバラバラになってしまっていた。結局、アフラへの組織だった援軍派遣が行われないまま、『第1次アフラ会戦』が開始される。
9月12日20:00 両軍はアフラ近くの宙域で激突する。両軍の戦力比は4:1と圧倒的に統一連合軍が上回っていたのだが、蓋を開けてみると統一連合軍迎撃艦隊は皇国追撃艦隊に苦戦を強いられた。それは艦隊戦に入る前に皇国軍の新兵器であるソルジャー「ア・クー」が迎撃艦隊に強襲を仕掛けたからである。ア・クーの航宙機並みの機動力と巡洋艦並みの攻撃力に迎撃艦隊はその数を磨り減らされていく。そして続く皇国艦隊との戦闘でもア・クーは投入され、迎撃艦隊は苦戦を強いられる。しかし艦艇数の上で圧倒していた迎撃艦隊は粘りに粘り、艦隊戦は予断を許さない一進一退の攻防を繰り返す事となる。
しかし此処で迎撃艦隊に耳を疑うような報告が届く。会戦が始まって24時間が経過した13日20:20 なんとアフラ基地が敵の攻撃を受けているとの報告が入ったのである。これには迎撃艦隊も動揺を隠せず、その動揺が艦隊全体の士気にも影響を与えて迎撃艦隊は徐々に崩壊へと向かって行くのだった。
一方のアフラ基地では皇国軍の別動隊による攻撃にさらされていた。迎撃艦隊が皇国艦隊と戦闘を始めて数時間の後、突然アフラ基地内各所で爆発が起こったのだ。この謎の爆破の対応に気を取られている隙を狙うように、謎の艦隊が出現したのだ。皇国のモノでは無い戦闘艦と輸送艦の混合艦隊は数にして20隻ほどで、その内の輸送艦は航宙母艦に改造されていて航宙機とソルジャーを発進させ基地を攻撃する。
まさか別動隊がいるとは思っていなかったアフラ基地は、稼働可能な全ての戦闘艦を皇国艦隊迎撃に向かわせてしまったため基地内のドックには修理中の艦艇しかおらず、基地の防衛システムと防宙用の航宙機隊での迎撃に出る。しかし、ソルジャー相手に基地の防空システムと迎撃機だけでは力不足で、時間が経つにつれて基地の防空システムは撃破され、遂に地上部隊が基地内に突入する。
その頃の迎撃艦隊は、アフラ基地が攻撃されていると報告を受けた動揺もあってか、戦線を維持できずに数時間後には撤退を開始する。しかし皇国艦隊の必要な追撃を振り切れずに損害だけが増えていく。このまま壊滅かと思われたそのとき、宇宙要塞アーシャから出撃した第7艦隊が救援に現れる。救援に来た第7艦隊が皇国軍の追撃部隊を足止めした事で、迎撃艦隊は何とか撤退に成功する。しかしアフラ基地との連絡が取れず、状況が分からないアフラに戻るよりも、アーシャに向かった方が良いとの判断で迎撃艦隊は第7艦隊と共に要塞アーシャへと進路を取るのだった。
9月14日6:00 基地内に敵の地上部隊が突入した事と、迎撃艦隊が敗北したとの報告が入ったアフラ基地は、これ以上の抵抗を諦め降伏を願い出る。これを受けた事で別動隊も戦闘を停止、条約に基づく対応を始めると共に彼らは自らの正体を明かす。
別動隊は皇国の正規軍ではなく、彼らと手を結んだ「アフラ解放戦線」の残党である事が分かったのだ。今から40年以上も前の4年戦争終結後に第3惑星圏でテロ行為で猛威を振るっていた彼らも、時の流れには逆らえず、徐々にその活動を減らしていった。そして10年くらい前から完全に活動しなくなったのだ。そのため世間的には自然消滅したと思われていたのだが、実は数年前から皇国と手を結んでいたのである。
4年戦争時代のメンバーも殆どいなくなり、世代交代していたアフラ解放戦線には既に活動資金も無く、海賊行為に手を染めて細々と存続していたに過ぎなかったのだ。そんな彼らに目を付け手を差し伸べたのが皇国軍だった。当初は、アフラ解放戦線が4年戦争に負けたのは、ゲーディア皇国の裏切りによるものだと断ったのだが、既にあの時代のメンバーが一部の幹部しかいなかった事と、今の状況の打開のために最終的に手を組む事になったのだ。そしてメンバーたちは皇国で戦闘訓練を受けていたのだ。
皇国軍が彼らに目を付けたのは、「パウリナ条約」破棄を目論んでいた頃である。条約破棄ともなれば、統一連合との関係が悪化して戦争になる恐れがあると予測していた皇国軍は、出来るだけ味方を、それも第3惑星圏内の味方を得たいと反統一連合組織と秘密裏に交渉を行っていたのだ。
その後は来たるべき戦争を見越して彼らの秘密基地にア・クーのパーツを運び込んで組み立て、皇国で解放戦線のメンバーがパイロット訓練を受けるなどして着々と準備を整えたのである。彼らの望みは勿論アフラの独立であり、そのためにこの別動隊はアフラ残党の全戦力を持って行われた謂わば彼らの最後の賭けであった。
9月14日12:00 アフラ基地の統一連合軍が降伏した後も、それに納得せずに散発的に抵抗を続けていた部隊も制圧され、アフラ基地は完全に解放戦線残党軍に占領されたのである。その後迎撃艦隊を破った皇国艦隊も合流し、解放戦線残党軍はアフラが統一連合からの独立した事を宣言するのだった‥‥‥。
【アフラ独立宣言(宇宙暦197年9月15日)】
9月14日 アフラ基地がアフラ解放戦線残党軍に降伏して占領されると、当時のアフラ首相「シーナン・スポッツ」は真っ先にアフラを脱出して統一連合に亡命する。これによって4年戦争終結から続いた「キッポス政権(行政)」は終了する。
スポッツ首相の亡命とゲーディア皇国艦隊のアフラ到着によって、アフラ各都市は全面的に皇国軍に降伏し、解放戦線残党軍リーダー「キサーノ・キッヴ」がゲーディア皇国軍を後ろ盾に、全世界に新生アフラ共和国の樹立を宣言。初代国家元首に就任する。
9月15日 アフラに皇国軍の増援として第4、第5、第6艦隊が到着、これによって皇国宇宙軍の全ての艦隊が第3惑星圏に集結する。さらにアフラ基地に残っていた修理中の統一連合軍艦艇を鹵獲し、新生アフラ共和国は国防軍の結成と宇宙艦隊の組織を急がせる。
9月16日 皇国軍はアフラに留まっていたキッポス政権の副首相「タリス・ブロポンツ」を使者としてエレメストに派遣し、統一連合政府との停戦交渉の意思を伝える。しかし、統一連合政府は返事を先延ばしにした事で、停戦の意思がないと判断した皇国軍は、20日にL1、L2コロニー群に向けて艦隊を派遣するのだった‥‥‥。
※1・【】内にある「」内の名称はゲーディア皇国側の作戦名。
※2・「運び屋」は、輸送会社の輸送業者とは別で、個人で行っている運送業者。大手運送会社と契約して仕事を回して貰ったり、個人で客を取ったりと経営形態は様々。