怠惰に創作

細々と小説の様なものを創作しています。設定など思い付いたように変更しますので、ご容赦ください。

H計画とミシャンドラ学 FILE6

俺は学園長代理のレッジフィールドに連れられ、高等部1年1組の教室を見学した。見学と言っても教室に入ってでは無く、廊下側の窓から中を見ると言った感じだ。

教室は流石50人の生徒が入れるだけあって広い。机が規則正しく並べられていて、生徒たちが座って授業を受けている。ただその机がまた何と言ったらいいかゴツイ見た目になっている。机は固定されている様で、その机の前と横を衝立と言うにはごつ過ぎる囲いで覆われていているのだ。囲われている事で集中して授業に取り組めると思うが、前まで囲われているため、あれでは先生が見えないだろう。これでは本末転倒では無いかと思いきや、各机にディスプレイが付いていて、そこから先生の授業を見聞きしているのだそうだ。まるでリモートで授業を受けているみたいだが、先生は教室内の教壇に立って授業をしているのだ。先生教室にいる意味ある?

あと、周囲を囲われているので、生徒が本当に授業を受けているかは教壇に立っている先生からは一切見えないと思う。そうなると、居眠りやサボっていたとしても分からないだろう。学生時代の俺はよく居眠りして先公に怒られたから、あの机があれば怒られずに済んだだろうにと空想する。が、直ぐにそのような邪な考えは捨てざる負えないと分かる。教壇に立って授業している先生の他にふたりの先生がいて、彼らが生徒の間を歩き回っているのだ。これでは居眠りなんて無理だろう。

 

「教員が3人もいますね」

「ええ、ただ生徒の間を見て回っているのは『補助教員』と言いまして、授業をしている正教員とはまた別なんですよ」

「補助教員?」

 

レッジフィールド曰く、彼ら補助教員は、通常の教師である正教員の補佐をする教員なのだそうだ。正教員が教員免許を習得しなければなれない職業だが、補助教員には教員免許習得などの制限が一切ない。極端な話し、自称「教えるのが得意」というだけでなれる職業だそうだ。ただ、教員免許が無いので正教員の様に授業で生徒たちに教える事は出来ず、生徒たちを見て回り、授業に付いて行けていない生徒を見つけては教えるというのが主な業務である。そこの処は免許が無くても講師になれる特別非常勤講師などとは差別化されている様だ。

その他にも、先生同士で授業内容を話し合ったり、テストの問題の作成を手伝ったり、採点を手伝ったりと、正教員が行う業務は必ずふたりの補助教員とのチームで行われているそうだ。

 

「如何します。他の教室も見ますか?」

「ええ、お願いします」

 

俺はレッジフィールドに付いて廊下を移動し、隣の2組に向かう。そして更に3組へ足を運ぶ。

すると3組にふたりの補助教員とは別に教室をうろつくひとりの生徒の姿が見えた。あの生徒は何故補助教員の様に歩き回っているのか疑問に思い、レッジフィールドに聞いてみた。なんせあんなに自由にうろついて、教師たちがその生徒を咎める様な素振りを見せていないのだ。

 

「あの生徒は何をしているんですか?」

「ああ、彼も生徒たちに教えてるんですよ」

「えっ!、生徒ですよ?」

「彼は数学の天才ですから‥‥‥」

 

レッジフィールドの話によると、あの生徒は数学クラブでも一二を争う天才で、学校の授業は彼にとっては退屈そのものでしかない。そこで、特別に補助教員の様にその知識を生かして他の生徒に教えて回っているのだそうだ。

因みに彼のお陰で3組は数学に関しては学年トップだそうだ。

 

「数学クラブ?」

 

クラブというだけあってクラブ活動なのだろうが、俺の学校にはそういった数学のクラブは無かった。クラブと言ったらスポーツ系と文化系だが、数学クラブはやはり文化系に入るのだろうか?

 

「我が学園は色々なクラブが乱立してましてな。ある意味何でもありと言う事です」

「何でも‥‥‥」

「数学の他にも文学や旧言語、歴史や地理、科学や物理に生物と通常の授業で行うものがクラブとして扱われているのです。それらクラブに入った生徒は授業を先取りして学びます。なので、一度受けた授業をまたやる事になりますから退屈なのですよ。まぁ、中には2度目の授業を確り聞く生徒もいるでしょうが。ですから特別に補助教員と同じ事をさせているのです」

「支障は無いのですか?」

「特に何も。それに学んだ事を他人に教える事でさらに記憶に定着するのですよ。知ってましたか?」

「あゝまぁ、聞いた事はありますが‥‥‥」

 

確かに覚えた事を人に解説すると記憶に残りやすいとは聞いた事があるが‥‥‥なるほど、それを実践していると言う訳か。

 

「ささ次の教室へ」

 

廊下を進んで次の4組に来た俺は、段々と退屈になって来ていていた。熱心に案内するレッジフィールドには悪いが、今の俺はその無数に種類があるというクラブの方に興味が行ってしまっていた。

クラブ活動と言えば放課後だ。今は午後の授業の時間でまだ時間がある。クラブ活動が始まるまで退屈だが、急いても意味が無いので学園長代理殿に付き合うとするか。

 

「4組は歴史の授業ですな」

 

レッジフィールドに4組を案内され、俺はどうせ代わり映えしないと窓から教室の中を覗く。するとそこに明らかに寝ているとしか思えない姿勢の生徒がいた。机の横の3分の2が覆われているので寝ている姿は見えないが、あの姿勢は寝ていないと取れない姿勢だ。まさかこの授業体制の中で居眠りをする強者が居るとはとは思わず、驚いた。

俺は同士を見つけて嬉しくなり、思わずレッジフィールドに居眠りしている生徒が居る事をチクる。

 

「あそこの生徒、居眠りしてますよね?」

「あゝ見たいですね」

 

学園長代理殿の反応は俺が思っていたのより薄かった。何という塩対応。俺の学生の頃なんか先公に滅茶苦茶怒られた記憶があるのだが‥‥‥。

そう言えば、周りの補助教員も歴史好きの生徒も居眠りしている生徒の事を無視してるよな。何故だ?

 

「いいんですか?」

「まぁ、全ての生徒が歴史好きになる必要は無いですからな」

「えっ!? ま、そ、それはそうですけど‥‥‥俺の学生時代なんかよく怒られたもんですから、つい」

「まぁ、この学園では学力より自己を高める事を重視しています」

「自己? 自己研鑽とか自己啓発の事ですか?」

「そうです。学力も大事ですが自己を鍛える。これが我が学園のモットーなのです。それに学力ならほかの学校がやってますからね。我が校はそれとは違う形で子供たちを教育しているのです」

「ハァ‥‥‥」

 

学力ではなく自己を鍛える。通常の学校とは考えが違うと言う事か?

 

「総師は‥‥‥イヤ、学園長は‥‥‥」

「言いやすい方で構いませんよ」

「あゝそうですか? 総帥は入学式の時に新入生たちにいつもこう言っておられます。『まず自らを知る事』だと」

「自らを知る?」

 

また何とも奇妙な事‥‥‥でも無いかもしれないが、自分を知るとは、自己分析しろと言う事だろう。新入生と言えばまだ6歳の子供だ。6歳の子供に自己分析しろとは結構ハードルの高い要求をするな。

 

「新入生にはチョット難解な気もしますが‥‥‥」

「ハハハ、入学してすぐに理解しろとは言いませんよ。卒業までの12年間でじっくりと考えるんですよ。それに最初は自分の好きな事や嫌いな事などでいいんですよ。あとは学園生活を通して徐々に自分を知って行くのだす。嬉しかった事や嫌だった事、得意な事やそうでない事などね。そうやって自分を知って行く。そうすれば社会に出たとしても自分探しなどという珍妙な行動を取る事も無いはずです」

「は、はぁ‥‥‥」

 

自分探しが珍妙な行動? まぁ、確かに自分を知った人間が自分探しなんてやらないだろうけど‥‥‥。

自己研鑽、己を知る。自分とは? そんな話を聞いてふと自分の事を考える。俺自身、自分の事をあんまり深く考えた事ないかもしれない。俺はレッジフィールド(ネクロベルガー)の言葉に思う処があり、これまでの自分の半生を思い返す。

俺、ブレイズ・オルパーソンは、第3惑星エレメストにあるリフォル・シティで生を受ける。

俺の生まれたリフォルシティの周辺には広大な穀倉地帯や畑などの農地が広がり、各所にそれを管理する農家が点在する一大農業地帯だ。穀物や野菜に果物などの様々な農作物が生産され、とくに有名なのがナッツ類で、アーモンドは世界に流通しているアーモンドの6割以上がリフォル産である。酪農も盛んに行われていて、牛乳や乳製品に牛肉なども生産され、リフォルシティから輸出されている。要するにリフォルシティは周辺の農作物の輸出業で利益を上げている都市って訳だ。だからリフォルはメガシティに匹敵する経済力があり、結構裕福な都市でもある。そんなところに俺は生まれた。

父親はリフォルでオレンジなどの果物を輸出する会社で働いていて、俺もあの出会いが無ければ親父みたいにそっち方面の仕事をしていたかもしれない。

母親は工場でパートとして働いていて、俺はひとりっ子だった。

学校は小中高と地元だったが、大学は近くのメガシティにある大学に行った。まぁ、何処にでもいるただの一般人だ。たいして目立つ事も無く、可もなく不可も無くって感じかもな。自分で言ってなんだけど。だが今の俺はジャーナリストとしてクエスの雑誌社の記者になってはいる。

だけど俺は、別にジャーナリストになろうと思っていた訳じゃないんだ。最初はカメラマンになりたかったのだ。それも動物や大自然を撮影するフォトグラファーって奴になりたかったんだ。

切っ掛けは単純な事だ。子供の頃に親に連れられて行った展示会で見た写真に心を奪われたからだ。そこに映る動物や鳥、昆虫と言った生物が固定され動かないはずなのに今にも動き出しそうな躍動感あふれる写真や、大自然雄大さを物語る写真を見たブレイズ少年は、自分もこういうた写真が取りたいと思ったのだ。この出会いが俺に道を示してくれたんだ。親にねだってカメラを買ってもらった。携帯用の端末でも写真が撮れるのにワザワザ買ってもらって、燥いでたな。今思うと結構な値段しただろうな。そんなカメラ片手に色んなもの取ってた。だからだろうか、俺がフォトグラファーになると話した時、両親は反対はしなかった。「自分の人生だから好きな事をしろ」って言ってくれたんだ。だから俺はフォトグラファーになるために故郷を出た。今考えるとあの頃は自分がしたい事に邁進出来た良い時期だったのかもしれないな。俺は大学で写真学科に入って写真について学び、晴れてフォトグラファーになる事も出来た。

序に彼女もこの頃できた。順風満帆の人生って処だ。

ただ全てのフォトグラファーが展示会を開けるわけではない。そう言った事が出来るのは、ごく一部の限られた人間である。俺はそういった有名フォトグラファーになろうと頑張ったが、現実は残酷で鳴かず飛ばずで仕事も少なかった。だからバイト感覚で新聞社に入って報道カメラマンの仕事もする様になった。すると、バイト感覚で始めた筈の報道カメラマンの方が徐々にメインとなって行ったんだ。お陰でフォトグラファーの仕事が出来なくなって、自然や動物を撮影する方が趣味の様になっちまったって訳だ。

言訳から言うと、俺がある新聞記者に付いた事が切っ掛けなんだ。そいつがとんでもない悪徳記者で、最初は写真記者として右も左も分からない俺に色々と親切に教えてくれるいい人だったのに、ある程度俺が仕事を覚えると、豹変して俺の事を自分の都合のいい道具とでも言わんばかりにこき使う様になったんだ。

彼奴の言い分としては、「色々教えてやったのだから恩返ししろよ! 人として当然だよな!」とかぬかしやがったんだ。信じられるか! ただあの時の俺は何も言い返せずに黙って従っちまったんだ。お陰で俺は彼奴の専属カメラマンよ。来る日も来る日も朝から晩まで彼奴にこき使われたよ。

彼奴は兎に角素行が悪くてな、強引で脅迫まがいの取材を繰り返していた。人の弱みに付け込む事に長けていて、どっからそんな情報仕入れたんだと驚きを通りこいて感心したもんだ。敵も多かった様だしヤバい連中にも目を付けられていた。だけど、前書の通り人の弱みに付け込むのが上手かったから誰も手出しできなかったんだ。

当然、そんなだから好き好んで彼奴に近付こうとする者は居なかった。だから彼奴は自分の命令に従う駒が欲しかったんだろう。そして俺が選ばれたって訳だ。迷惑な話だ。

そんな彼奴の口癖は「何処にネタが転がっているか分からねぇ」「ネタを掴んだら沈黙しろ」だ。ことある毎にそう言って俺を連れまわし、休日にも呼び出しを受ける事も当たり前になってたな。断ろうもんならストーカーでもしてるのかって思う位俺のこと知ってて、その中で脅しになりそうなモノをチラつかせて従わせていたな。だからフォトグラファーの仕事なんてやってる暇が無かったよ。

だがその関係もある事が切っ掛けで終わりを告げたんだ。それは珍しく取れた休日に趣味となりつつあった動物撮影にある自然保護区の森へ行った時だ。

因みに俺はボランティアで自然保護に協力してて、その保護区の森に生息している動植物や特に絶滅危惧種などを守る活動をしてるんだ。その縁で保護区内の森での撮影を許可してもらってる。ま、こっちの方も報道カメラマンになって彼奴にこき使われる様になってからは、殆ど行け無くなっちまったがな。珍しく休日が取れて、久しぶりに撮影に行けたんだ。日頃の溜まったストレスの解消にもなるしな。

久しぶりの森での撮影は気持ち良かったよ。心が洗われるって感じだったな。だがそんな中、俺の人生を一変する出来事が起こったんだ。

それは俺が撮影して回っていると遠くの方に黒い影が見えたんだ。最初は熊かと思ったんだが、よくよく見ると人影らしかったので、俺は近付いてみたんだ。なんせここは自然保護区の森だ、俺みたいに許可が無い人間が入って良い場所じゃないんだ。森の周辺はガードによる見回りが行われてるんだけど、なんせ森は広大だから監視の目にも限界がある。俺は監視の穴を付いて森に入り、珍しい動物や昆虫などを捕獲する密猟者じゃないかと思ったね。そう言った馬鹿は何時まで経っても無くならない。そんな馬鹿に大金払う馬鹿がいるからだ。だから俺はそんな馬鹿どもを捕まえる為に気付かれないように近付いたんだ。

危険な事だが俺もボランディアで此処の保護に協力している身だ。奴らに気付かれないように近付いて奴らの顔写真や動画を取ってガードに送ろうと思ったんだ。というか此処の撮影を許可してもらっている身である俺は、正義感から森のためにそうしようと思ったんだ。本来だったら発見した場合はすぐさまガードに連絡を入れ、自分はその場から逃げるか隠れるかして自身の安全を優先する様に言われてるんだけど。万が一ガードが来る前に密猟の仕事を終えてトンズラされたら捕まえる事が出来なくなる。それではほとぼりが冷めた後にまた密猟するだろう。その時のために証拠と密猟者の顔を撮ってやろうと思ったんだ。

そして密猟者に気付かれずに近付く事に成功した俺はある事に気付く。彼らは密猟者では無かったのだ。それよりもっとヤバい連中だった。奴らがしていたのは死体の処理だったんだ。要するに穴を掘ってそこに死体を埋めるってやつだな。此処は保護区だからめったに人の立ち入りが無い。監視は森に人が入らない為に行われてるから、森の中での事までは無頓着だ。死体を隠すにはちょうどいい場所だったんだろうな。

ただ死体を隠すのにはこの森は最適かもしれないが、ヤバい組織の連中ってのは、死体を薬品なんかで骨までドロドロに溶かして下水に流すと思ってた。それって映画の見過ぎか? 

そんな事は置いといて、偶々ヤバい連中の死体処理現場を見てしまった俺はビビっちまった。此処から一刻も早く逃げ出したかったんだが、情けない事に足が震えて動けなくなっちまったんだ。だから震える身体を必死に抑えながら息を殺して隠れながら携帯端末の撮影機能で映像を撮影した。暫くして奴ら俺に気付かず行っちまって命拾いしたんだが、此処で俺はガードに連絡する事を戸惑っちまったんだ。映像を確認したらバッチリ顔も映った動画が取れた。あとはそれをガードに送るだけだ。保護区で何かしらの事件・事故が起こった場合、速やかにガードに連絡する事になっているので通報は保護活動家からすれば義務でもあるんだが、俺は通報を躊躇してしまったんだ。取れた画像を確認した瞬間、あのイヤな記者の言葉が頭を過ったんだ。

 

「ネタを掴んだら沈黙しろ」

 

要するに他の奴らにネタを教えるなって事だ。そして俺もその言葉の通りに選択した。この事件は俺が一人で調査すると‥‥‥。

いま思うと何故そんな無謀な事しちまったのかと思うぜ。別に俺は記者じゃないし、ガードに連絡して警察の手に委ねても良かったはずだ。

理由としてはやはり彼奴に対する対抗意識だったのかもしれない。同じ記者ならまだしも、俺は単なるカメラマンだ。元々はフォトグラファーであって、報道関係のカメラマンじゃない。だけど彼奴に色々仕込まれ、俺だって出来ると思っちまったのかもしれない。ムカつく彼奴の鼻を明かしたいとも思っただろう。結果から言えば俺は成功したしな。

まず俺がやった事は取った動画に移っていた男たちの探す事だ。あそこには3人の男たちが居て、動画に映った顔を手掛かりに調査を開始した。ただ、2日後に3人のうちの2人が見つかった。その2人は街のチンピラで、とある反社会組織の下っ端だった。ただそれは俺が調べて分かった訳では無く、ニュースで射殺死体で発見されたと報道されていたからだ。警察はギャングの縄張り争いによるものと断定して、捜査を始めたという内容だ。

あっと言う間に動画の2人が死んでしまい、俺は焦った。だから最後に残った3人目について調べる事にした。彼はチンピラとは違い身なりも良かったし、どうも彼らに指示を出す役割の人物だった。俺はそいつが口封じのために抗争に見せかけ2人を始末したとみて調べる事にした。なんせ俺には決定的な証拠があるんだからな。

俺がまず始めたのはあの悪徳記者との決別だ。なんせ彼奴と関わった状態でこの事件の調査は無理だ。あっと言う間に嗅ぎつけられて奪われかねない。だから俺は新聞社を辞めてフリーで動く事になった。一種の賭けだ。給料も貰えなくなるしな。

そしてフリーになった俺は調べに調べた結果。あの男が誰なのか分かった。なんとあの死体遺棄男はある大物政治家の私設秘書だったんだ。さらに調べている内にその大物議員の事を調べていたフリーの記者がいて、彼が行方不明になっていた事も掴んだ。要するに消されたって事だな。あの死体遺棄私設秘書によ。そして森に埋められ、その現場を俺が見てしまったって事だ。

其処で俺は考えた。もし俺があの死体遺棄の事を世に公表しても、その秘書が逮捕されるだけで大物議員にまでは届かないだろうと。だから俺は今度は大物議員の付いて調べる事にした。ま、あの議員はかねなかり黒い噂が絶えなかったから調べれば調べるほど埃が出て来た。ただ決定的な証拠が無いから起訴されてないだけだ。だから俺が彼奴のやり方を駆使して証拠探しを始めた。そうしているうちに俺はある情報を掴んだ。それはあの死んだチンピラのひとりと付き合っていた彼女が、俺に買い取って欲しい物が有ると連絡して来たのだ。最初に会った時は知らぬ存ぜぬを通していたが、やはり何か預かっていたのだろう。

俺はさっそくチンピラの彼女を探して会う事にした。彼女は彼氏のチンピラから預かったメモリーを渡してくれた。収入が無い俺には痛い出費だったが、目ん玉飛び出るほどの高額で売り付けられなかっただけ良しとしよう。如何も彼女は、彼氏であるチンピラが死んで怖くなったらしく、メモリーを持っているだけで気が気では無かった様だ。だから接触した俺を当初は警戒して突っぱねたが、早くメモリーを処分したかったから俺に連絡を入れたという訳だ。

では、肝心のメモリーの中身だが、あの大物議員の私設秘書が、あのチンピラたちに高額報酬で死体と証拠の処分を要請すると内容だ。内容を聞く限り、記者を殺したのは秘書でもチンピラでもない大物議員と言う事だ。秘書が不用意にも大物議員の名前を口走り、尚且つ事故であると強調していた。事件の流れは簡単だ。議員が記者に強請られて思わず殺してしまい、その始末を私設秘書に任せたって処だ。そして死体の始末や記者が集めた証拠を処分するのにひとりでは心もとないと、チンピラたちを大金で雇ったって事だろう。そして議員の名前を聞いた事でチンピラたちは消されたのだろう。これについては口走った秘書が悪いと思うが‥‥‥。チンピラたちからすると災難だったとしか言いようがない。

そして俺は、そのメモリーと調べ上げた記事を新聞社に持ち込んだ。こうして大物議員は疑惑の目に晒され、それが元で今まで闇に葬られてきた数々の汚職が明るみに出た事で失脚する事になったのだ。序に他の議員も芋づる式に起訴され、一大汚職事件に発展した。そうなると、記者を殺害して埋めた事件の事が霞んでしまったが、腐った議員を大量起訴に持ち込んだのは俺の記事のお陰であり、それが元で俺は正義のジャーナリストという肩書‥‥‥今思うとレッテルを張られる事になったんだな。

ま、そのあとは知っての通り肩書のプレッシャーに押しつぶされそうになりながら無理な取材を繰り返し、結果訴えられて新聞社をクビになった。そして今や故郷から離れた別の惑星で小粒雑誌社の記者をしてるってわけだ。笑えるよな。結局嫌っていた彼奴と同じことして破滅しちまったってわけ。彼女とも分かれたし‥‥‥(´Д⊂グスン

あゝそうだ。あの悪徳記者は俺がスクープを取った時に悔しがっててな。自分もスクープを取ってやるとばかりに危ない橋を渡って消されちまったんだ。敵も多かったしな。俺は消されなかった分、運が良かったのかもな。

 

あの~

 

俺って何処で間違えたんだ?

 

お~い

 

やっぱり彼奴の下でカメラマンをした時なんだろうか?

 

もしもーし

 

それとも彼奴に黙って‥‥‥。

 

大丈夫ですか~?

 

って五月蠅いな!

 

「え、あ、えっ!?」

「ああ気が付きましたか。さっきからボーッとしたが、如何かされましたか?」

「え、あゝイヤ、ちょっと昔の事を思い出してしまって‥‥‥」

「あゝそうですか、生徒たちを見て自分の学生の頃を思い出したのですね」

「えっ!? あゝ‥‥‥そう言う事です」

「分かりますよ」

 

学生の頃を思い出した訳では無いが、あまり人に話したくない事なので、俺はレッジフィールドの勘違いに同意する。

 

「如何しますか? 他のクラスもご覧になりますか?」

「あゝいえいえ。授業風景はよくわかりました。でしたらクラブの方も見学したいですね」

「あゝそうですか、そちらの方は授業が終わってからなので、応接室でお待ちいただく事になりますね」

「でしたらそちらでもっと学園に付いて話していただきたいですね」

「私で良ければお付き合いいたしますよ」

 

俺は授業の見学を切り上げ、レッジフィールドと共に応接室へと向かった。