自分とは何か? そんな哲学的な事を人間は人生で一度は考えるとか、そう言えば俺もそんなこと考えた事がある様な無い様な‥‥‥。
そして今の俺は10歳の美少年になってしまったのだ。
元の俺は見た目もパッとしなかったし、結婚も諦めた只の引き籠りの40代のオタクおじさんだった。そん俺が今一度人生をやり直す、そんなチャンスを与えられたのだ。俺は神様に感謝した。地球、この惑星、どっちの神様のお陰でこの地に転生したか分からないから一応両方の神に感謝した。俺をこんな美少年で人生をやり直しさせてくれてありがとうございます💖
とまぁ、そんなこんなで俺はこの新たな惑星で新たな人生を迎える事となったのだが、俺って一体何なんだ? と言う疑問が湧き上がってしまった。この身体、確か変な研究室みたいなところの水槽? カプセル? みたいな中にいたんだよな? 変な研究室の水槽だかカプセルだかに入れられてるって事はだ、ゲームなんかでもお馴染みの生物兵器の可能性がある。って事はだ、俺ってなんかの生物兵器だったって事か? まさか超能力を使えたりとか、超絶身体能力が出せるとか、ゲームなんかじゃ見た目がバケモン(それが美しいと言う奴もいるけど)みたいなのが殆どだけど、俺、美少年だし‥‥‥まさか能力使ったら醜くなるとかじゃないだろうな? そんなの絶対嫌だぞ!
とまぁ、こんな疑問を持っても不思議じゃないほど異質な誕生をした俺なんだが、一体俺ってなんだのだろうか? この疑問がこの世界に来て最初の関心事項になっていた。
ま、当然だよな、自分が何者か知りたいのは当たり前だ。特に疑惑を持ってくれと言わんばかりの生まれ方してるんだからな。
ただそれに付いては直ぐに知る事になる。俺をあの研究所から連れ出したナイザ・ティチャルド博士とジーン・リッチ博士が説明してくれたんだ。
まず、俺ともう一人一緒に連れて来られた少女は、あの研究所で遺伝子操作で身体レベルを強化されて生まれた人間、所謂「強化人間」なのだそうだ。
おお! 強化人間きたー!! やっぱりそうなんだ‥‥‥! それを聞いた瞬間、俺の頭の中はカーニバルが始まった。馬鹿みたいに燥いだ(あくまで頭の中で)けど、よくよく考えると強化人間て言ったら精神病んで情緒不安定なイメージがあるから、諸手を上げて喜ぶべき所でもないんだよな、チョット不安になって来た。だけどそれに付いては心配する事は無かった。人の遺伝子を操作する事で常人より優れた能力を持って生まれた人間というだけで、何か異常がある訳では無いそうだ。それどころか外見的美しさに高い学習能力と身体能力、肉体の強靭さとあらゆる病気への耐久性など‥、おおよそ人間が欲するあらゆるものが、ほぼパーフェクトに備わっているらしい。どっちかというと「種」のコーディネーターみたいなものかもしれない。
では何故その様な人間がつくられたのか? それは軍の発案した「強化兵士(パーフェクトソルジャー)計画」によるモノらしい。来たよ強化兵士、軍と言えば強化兵士や強化生物などが定番だよな。まぁ、俗にいうB級映画的展開だな。俺そう言うの好きなんだよな。
それでその強化兵士計画っていうのを説明する前に、ナイザ博士から今のこの恒星系の国際情勢を超簡単に掻い摘んで説明された。異世界に来たばかりで、この星の世界情勢は全く分からんからありがたい。
まず、この星系は太陽系のように恒星の周囲を無数の惑星が回っていて、地球と同じくこの恒星系でも第3惑星が人類発祥の惑星らしい。名前は「エレメスト」と言って、何だかエレメントみたいな名前だな。ま、それはいいとしてだ。この惑星もかつては無数の国家が乱立していたのだが、ある事が切っ掛けで国家間が統一され、今はエレメスト統一連合政府によって統治されているのだそうだ。
地球も何時かそうなるのかねぇ‥‥‥切っ掛けになった「ある事」って何だろう? ふたりに質問してみたけど、ふたりともにはぐらかせれて教えてくれなかった。何故だろう? 気になるんだけど‥‥‥。
取りあえず話を進めるが、この統一連合政府だが、エレメストだけではなく、宇宙に進出して、地球で言う処の月(ここではアフラって名前らしい)を開発して宇宙都市群を建造し、さらにはエレメスト周辺の宇宙空間(ラグランジュポイント)にもコロニー群を建設してドンドン宇宙に進出しているらしい。正にあのアニメの世界と一緒だ。違う処と言えば、既に第4惑星(太陽系で言う処の火星)まで都市開発が進んでいて、現在では第5惑星(太陽系で言う処の木星)にも開発の手が回っているとの事だ。
なかなかの発展ぶりだが、そこでひとつの問題が発生したらしい。統一連合政府の統治が進むにつれ、彼らは自分たちの住むエレメストを重視した政策を取り、徐々にアフラやスペースコロニー群、第4惑星へ移住した宇宙移民者に対して植民地の様な統治政策を取る様になってしまったそうなのだ。
当然、宇宙移民者はその事に不満を持ち、統一連合政府に反発してデモや暴動などが頻発するようになったのだが、統一連合が取った解決策が武力による弾圧で抑え込む事だった。こんな事されれば宇宙移民が統一連合に敵愾心を持つのは当たり前の事で、エレメストと宇宙移民者との対立構造が生まれたのだ。こう言う処もあのアニメと似ているな。
そんな中、遂にアフラで「アフラ解放戦線」なる武力勢力が誕生し、統一連合との間で戦争が勃発してしまったのだ。4年戦争或いはアフラ(解放)戦争と呼ばれたこの戦争は、結果エレメスト統一連合の勝利で終わったのだが、このどさくさに紛れて第4惑星が「ゲーディア皇国」を名乗って独立し、現在に至る訳だ。
こうなると、エレメスト統一連合とゲーディア皇国は、互いを仮想敵国と見なす事になるだろう。一応、皇国は統一連合のお墨付きをもらって独立したらしいのだが、そうは言っても今まで全てを管理していた者としては、ゲーディア皇国の存在は目の上のたん瘤でしかない。それは皇国も百も承知で、互いに軍事力強化の道を辿る事になる。当時の人々はまたすぐ戦争があるのではと噂していたらしいのだが、意外にも戦争にはならなかった。
と言うのも、統一連合は当時アフラ解放戦線との戦争で経済がガタガタになっていて、とても次の戦争をする余裕がなく。
一方の皇国側も、そんな状況の統一連合と比べても圧倒的に軍事力が劣っていたため、両国共にとても戦争出来る状態ではなかった。それから20年余りの時が経ち、戦後の傷も癒え、再びきな臭くなった両国の関係を緩和するため、ある人物が立ち上がる。それはゲーディア皇国の2代目皇帝(女帝)パウリナである。彼女の呼びかけによって、統一連合と皇国の間で軍縮条約「パウリナ条約」が結ばれる事となり、両国は平和への第一歩を歩みを進めたのだ。
でだ、そんな世界情勢の中、統一連合は強化兵士計画を進めていたのだ。まったく人とは何とも戦いの好きな生き物なんだろうと呆れてしまう。ま、それだけ相手が信じられず、猜疑しているのだろう。
皇国の方でも皇帝が代替わりして、その皇帝が「人権剥奪法」などというトンデモナイ法律を作って、エレメストでは「狂皇」なんて呼ばれているらしいから、隠れて軍拡していてもおかしくないらしい。どっちもどっちってやつだ。
で、本題に入るが、こんな状況の中、軍に強化兵士を作れると売り込んだ人物がいた。それが俺たちを作った「ノゲム・ジ・オームズ」というマットサイエンティスト(出たB級映画お馴染みのマッドサイエンティスト!)である。
彼の生い立ちは遺伝子学の権威だった両親から生まれ、彼もとても聡明な頭脳を持って生まれたそうだ。そんな中、両親は彼の弟の遺伝子に手を加える事で、完璧な人間として「アルファ」なる人物を産み出し、世界に衝撃を与える事になる。
だがしかし、その行為を科学の発展と称賛する者もいれば、遺伝子操作で生まれたアルファとそれと作った両親を、神をも恐れぬ行為だと言って批判する者もいる。そんな賛否に分かれての論争の最中、アルファを悪魔の子と批判する者達の手によって、彼は家族ともども殺害されて屋敷に火を放たれたのだ。
この事件は「アルファ事件」としてエレメストでは有名な話しらしい。人の遺伝子を弄って完璧な人間を作る。そしてその完璧すぎる能力に嫉妬した人間たちが自然の摂理を盾に一線を越える。この世界にも「青い秋桜」みたいな過激な連中がいるのだと分かって怖くなった。俺たち大丈夫か?
しかし、アルファの兄であるノゲム博士は人知れず生き延び、その後は過激な連中から身を隠す様に細々と生きていた様だ。しかし、10年程前にエレメスト統一連合軍のある高官に、人間の遺伝子を操作して強化人間が作れると話を持ち込んだのだそうだ。要は自分は優秀で忠実な兵士を作り出せると言った訳だな。
当時、今もだろうが、統一連合政府と軍部は緩やかな対立構造だったらしい。しかも、政府、軍部の内部でも権力闘争があり、それに付け加えてパウリナ条約をめぐっても推進派と反対派の対立があったそうだ。そんな派閥が犇めく中で、博士は自分の話を聞いてくれそうな高官に話を持ち込んだのだ。
ノゲム博士の目論見は当り、その高官と彼の派閥は強化兵士計画を軍内での自らの成果とするため、極秘裏に廃棄された資源衛星に研究所(おれたちが脱出したあそこ)を造って計画を推進したらしい。
しかしノゲム博士の狙いはその後にあった。博士はこの強化兵士計画を隠れ蓑にして、「新人類(ネオ・ヒューマン)計画」なるものを計画していたのだ。新人類計画とは、B級映画好きの俺なんかは何となく想像できてしまうのだが、今の人類(旧人類)を抹殺し、自らが生み出した新人類によって世界を支配するという、トンデモなくB級映画感溢れる計画なのだ。
上手く行く訳がない。そんな風に思ってしまうのだが、元より俺たち強化人間は、高い学習能力があるため大抵の事が出来てしまう。今現在ネオ・ヒューマンは俺たちと既に故人のアルファを覗いたら9人居て、それぞれがノゲム博士の優秀な研究助手であり、高い戦闘スキルと戦術眼を持つ戦闘員でもある。
現に俺は研究所で実際に見たネオ・ヒューマン「ベータ」に、あの研究所で追いかけ回されている。確かにあの強さは異常であった。現実世界にアニメのキャラが出て来たような錯覚さえあった。目の前で人が殺されるの初めて見た。今思い出すだけで震えて来る‥‥‥。
そして今から1年前、ノゲム博士は計画を実行に移す。まずノゲム博士が行ったのは研究所の乗っ取りである。研究所の警備(監視?)に当たっていた部隊(規模は一個中隊程)を、たった9人のネオ・ヒューマンたちで制圧し、そして研究員や職員に自分の計画に賛同するよう脅迫したそうだ。無論賛同しない者は排除される。そしてあたかも研究は順調ですよと言わんばかりに高官たちの目を欺きつつ、計画を推し進めていたらしい。
こんなんで本当に高官たちを欺けるのかと疑問を持ってしまうのだが、如何やらその高官、博士と数十人の研究助手や職員、後は警備という名目の監視の部隊を要塞に送ったら後は報告だけ受けていただけらしい。
もっと関心持てよ! とも思ったが、抑々あの研究所は秘匿性を高めるために、通常の宇宙航路から大きく外れた場所にあって、エレメストの重力やらなんやらの影響を受けるため、行くとなると可なり面倒な処なのだそうだ。そんな処にお偉いさんが一々足を運ぶわけもなく、偶に部下の士官を寄越す程度のずさんな管理体制だったそうなのだ。
では、博士はこの後どういう計画を立てていたのかというと、軍のコンピューターにハッキングを仕掛けて核ミサイルを乗っ取ろうとしたそうなのだ。要するに核で世界を浄化(破壊)し、自分達の世界を構築するのが目的だった様だ。
イヤそんな事したら人が住めなくなるやん! って思ったんだけど、俺たち強化人間は放射能にも耐性があるから汚染された世界でも生きられるそうだ。嬉しいやら悲しいやら‥‥‥。
軍の杜撰な管理体制のお陰で、難なく計画の第1段階である研究所の乗っ取りを成功させたノゲム博士だったが、此処でとんだ裏切り者が現れた。リッチ博士だ。彼がナイザ博士を仲間に引き込み、ノゲム博士の計画を統一連合軍に密告したんだ。そしてあの脱出劇に繋がると言う訳だ。研究所は軍に爆破されてノゲム博士の計画は水泡に帰し、博士と9人のネオ・ヒューマン達は研究所の爆発に巻き込まれて死亡したのだった。めでたし、めでたし‥‥‥?
う~ん、これもB級映画感がある話だ。序に言うと実は博士は生きていて続編に続くって展開もある。大体続編て変な方向に行って面白くなくなるんだよな。ま、俺はそういった耐性もあるからいいんだけどね。
如何でもいい話は置いといてだ。ナイザ博士たちは何故俺たちを連れて行ったのか? ふたりは俺たちは助けたかったと言っていたけど、俺が思うに統一連合軍に計画の成果として俺たちを差し出すためかもしれない。たったふたりしかいないけど、俺たちはノゲム博士の洗脳を受けていないので差し出しても問題が無いと判断されたのだ。と考えるのが妥当だろう。もしかしたら軍はナイザ博士たちに俺たちと同じ強化人間を作らせようとしているのかもしれない。これもB級展開?
俺としてはちょっと複雑な気分だ。俺が目を開けた時、ナイザ博士は俺の事を天使と呼んでくれていた。理由としては俺と一緒に逃げた少女、そして結局一緒に逃げられなかったミューという強化人間の3人は、彼女の卵子が使われているそうなんだ。彼女は俺たちにとっては実際の母親なんだ。そんな彼女が俺たちを軍の手土産にしたとは思いたくはない。だけど科学者って自分の研究欲? 知識欲? って言うのかな? 其れを満たしたい人種なんだよな。俺としては、美人な博士がそんな事するとは思いたくないけどな。
あ、因みに精子の方はリッチ博士のモノらしいので彼は俺の父親だな。ふたりまだ20代で、あの研究所には交代要員として3年ほど前に来たばかりらしい。年齢も交代要員の中では一番下で、ここに来る前年まで大学生だったとか。だから青臭い正義感で大それたことをしたとも言える。
あと、20代其処らのふたりに俺くらいの歳の子供が居るのは可笑しいんだけど、俺たちってノゲム博士の研究のお陰で急成長させられてるんだと。あの水槽に入っていると1年で5歳位まで身体が成長するらしい。それで大体3年間、15歳位にまで成長したら水槽から出して、色々と教育されてノゲム博士の手駒になる訳だ。水槽から出れば成長スピードは普通の人間と同じになるらしい。
異世界に転生したらエライ設定の人間になっててホント吃驚したぜ。ただこれからはこのチートな能力を使って人生をやり直すんだ! 俺の第2の人生が今此処から始まるんだ!
あの研究所を脱出した後、俺たちは軍に連れられてエレメストに降りた。第3惑星エレメストは地球とそんなに変わらない惑星で、俺がいた地球からするとチョットだけ近未来な感じの場所だった。本当にチョットだけなんだよな。宇宙に進出してるからもっと進んでいそうなんだけど、アンドロイドの一体も居ないんだよ。だから今の地球とあんまり変わらない惑星だ。
そこで俺ともう一人の強化人間の少女は、軍の施設で学力テストや身体テストなどを受ける事になった。最初は嫌だと思ってたんだけど、それが意外や意外、とても楽しかった。運動音痴で勉強もそんなに得意でない俺が、非常に楽しかったんだ。なんせ強化された身体だから様々な運動を軽々と熟し、学習能力も高い。俺はテストで軽く常人を超えて見せ、なんかすっごく気分が良かった。出来るってこんなにも楽しいんだと初めて知った。イヤ、本当は知ってたのに、面倒だとか辛そうだとか言ってやって来なかっただけなのかもしれない。どうせ自分には出来ないと勝手に諦めて‥‥‥。
ま、むかしの事はもう如何でもいいか。
ただナイザ博士からは俺たちが強化人間だというのは内緒にするよう言われている。そりゃそうだ、此処には青い秋桜みたいな連中がいて、現にアルファ事件なんて物騒な事件も起きてるんだ。犯人捕まっていないみたいだし、余り目立つのは禁物だ。どんなに高い能力を持っていても、やはり人はひとりでは弱い生物なのだと思う。これが剣と魔法の異世界転生だったら違ったんだろうが‥‥‥何故なんだ? 何故俺はファンタジー世界じゃなくてSF世界なんだ? 俺がメカ好きだからか? だからって剣と魔法の世界でもロボットがあってもいいだろうがよ!
と、愚痴ってもしょうがないので話を続ける。
それで俺のエレメストでの生活だが、軍の監視下にはあるものの、ある程度は自由は認められている。
ナイザ博士とリッチ博士が保護者で、一緒に研究所を脱出した少女「ラムダ」は俺より5歳年上の姉として疑似家族、と言うか実際に遺伝子的には家族なんだけどね。軍の用意した家で暮らす事になったんだ。
俺はニューという名前では記号的で嫌だったので、名を変える事にした。新しい名前は「ネオ」だ。ニュー(新しい)という事で、同じ意味のネオにしたって訳だ。捻りが無いかも知れないが、こんなもんだろう。自分の名前を自分で決めるのは結構変な気分だった。ゲームのキャラの名前は考えるけど、あれは自分であって自分ではない様なものだからな。それからあっちの世界で使っていた「スカイ」にしようかとも思ったけど、やめた。あれは青い機体とのセットの名前だから、こっちの世界のゲームに似たようなのがあれば使うかもしれないけどね。
それに一緒に逃げた少女、じゃなかった姉さんも名前を変えた。ラムダじゃ女の子の名前らしくないからって変えたんだけど、新しい名前は「ラムザ」だ。こっちも捻りが無いよね。
と言う訳で、此処から俺のエレメストライフが始まった。それは今迄地球で送っていた生活とは全くの別物だった。俺は軍が用意した学校に通い、そこで今までの人生ではありえない事が起こったんだ。それは‥‥‥女子にモテたという事だ! 顔がいいから当然モテるだろうと思ったけど、モテまくった。怖いくらいにモテた。しかも変な性癖を持った男子からもモテた。そっちは勘弁してほしかったけど、兎に角モテた。
当然、勉強も運動でも学年トップになってしまった。余り目立たない様にって言われてたんだけど、あれだけ出来るとつい調子に乗ってしまうもんだ。俺は昔から上手く行くと調子に乗ってしまうタイプだったから、調子に乗らない訳がない。お陰でクラスと言うか、学校中で有名になってしまった。
さて、学園生活をある程度エンジョイした処で、俺はこの惑星の事を調べる事にした。自分が飛ばされた惑星の事をだ。
取りあえずは歴史だ。歴史を知ればこの星の人々の営みが分かる。戦国武将好きが高じて歴史好きになった俺としては、この惑星の歴史に大いに興味が有る。今の俺はまだまだ小学生で、学校で習う歴史なんて大雑把な流れでしかない。なので、詳しく知るために早速資料を漁ってみたのだ。
まず、この星では地球で言う処の紀元前に当たる元歴と、西暦に当たる正暦(但し、今は旧暦と呼称される事の方が多い)とがあり、今現在使われているのは宇宙暦だ。
それでこの惑星の成り立ちは地球とよく似ている。長い原始の時代から、様々な文明と宗教が興る古代、科学が発達する中世、地球環境が問題視される近世と時代が進んで行く事になる。その中では、地球と同じく戦争による国の勃興が繰り返されている。人間の優れた処と愚かな処は違う惑星でも変わらないのだなぁ~ッと、シミジミ思った。
この第3惑星エレメストは、今では統一連合によって行政は統一されてはいるが、元は様々な国家があり、その国特有の歴史や文化、宗教に風習、政治や法律、教育等‥があったのだ。これは地球でも同じだよな。だから地球での国際状況を知っている俺からすると、人類の統一なんて夢みたいなものだと思っていた。統一国家なんて創作の世界の産物だと思っていたんだけど、現に俺が今いる世界がそうなのだ。あ、イヤ、今は厳密に言うと違うか‥‥‥。
それでは一体なぜ、異なる主義や文化に宗教を持つ者たちが、互いの壁を取り外せたのか? 記録にはある事件が起きた事が、その切っ掛けになったと記されている。
その事件というのが、AIの暴走事件である。地球でも映画などで度々警告されているあれだ。エレメストでは実際に起こっているのだ。ただ、エレメストで起こったのは映画とはチョット異なる暴走事件である。地球だと、AIが暴走して人類を絶滅しようとしたり、戦争に成ったりするのが定番だが、エレメストで起こったAIの暴走はそうではなく、AIが人類を強制管理すると言うものだ。無論、これは人類側がAIに自分たちを管理する様にプロブラムしたわけではなく、AIが勝手に人類の管理を始めてしまったというのだ。
そしてこの時代の事を、歴史の教科書にはこう書かれている。
「AIの暴走によって人類は苛烈な監視社会で生活を余儀なくされるも、やがて人々は立ち上がり、遂にはAIとの戦争に勝利したのだ」
という簡素な記述となっている。
ただこれがふざけてるのかと言いたいくらい簡素な文章なのだ。上記のたったこれだけの文章で、AIによる人類の管理と戦争の時代を説明しているのだ。AIによる暴走事件から人類の勝利までに70年かかっている。その70年をたったこれだけの説明で終わっているのだ。これは如何見てもおかしい。なので俺はこれについて深く調べる事にした。すると、エレメストの人々、と言うか、統一連合政府がこの時代の事を世間に知られたくない様なのだ。要するにトラウマ級の黒歴史があるって事が分かった。どうやってもアクセスできないデータベースが存在するのだ。
と言う訳で、俺は最近覚えたハッキング技術を駆使して、統一連合の規制の掛かったデータベースにアクセスする事にした。隠してるんなら見てみたいよね。案の定、その規制されていたデータベースにAIに支配されていた時代の記録が見つかった。
それでは極秘資料に記されていたAIの暴走事件と人類の勝利に付いて話して行こう。
旧暦の末期、その当時の世界は、百数ヵ国の国々に分かれていたのだが、幾つかの経済や軍事大国を中心に、国々が同盟関係に有る3つの政治的勢力に分かれていたんだ。共和連盟、民主連邦、独立同盟という各々の政治的主義で繋がった勢力と、それの何処にも参加しない幾つかの小国家で世界は構成されていた。特に3大勢力は、お互いに牽制しつつも3竦み状態であったためか、ある程度の均衡が保たれていて、国際交流や貿易などを行って表面上は平和的な関係ではあったが、水面下では牽制し合っていたんだ。地球も似たような物だ。平和平和と言いつつも、国家間の争いは一向に無くならない。
そんな中、民主連邦政府が、完全自立型AI搭載の無人兵団(師団)の結成を大々的に喧伝した事で、事態が急変する事になる。
無人部隊の構想は、元々は民主連邦よりも先に共和連盟によって考えられていたモノだったらしいんだけど、共和連盟の世論が部隊を完全に無人化にする事に抵抗を示したため先送りなっていたのを良い事に、民主連邦が先に無人兵団を結成してしまったと言う訳だ。
この事は共和連盟に衝撃が走った。当然だが彼らはすぐさま無人兵団の結成を急ぐ事となる。この時は今まで反対していた世論も掌を返したように賛成したってよ。それで2大勢力の無人軍団化競争に刺激を受けた独立同盟でも、軍隊の無人化を推し進める様になったんだ。完全自立型AI内蔵のアンドロイド兵や無人戦車、無人航空機に無人の艦船、そう言った兵器がドンドン生産されて行ったんだってよ。そしてそれが悲劇の始まりとなったんだ。
先に軍の無人化を成し遂げた民主連邦は、毎年のように新たな無人部隊を結成しては軍事パレードを催して、自分たちの武威を世界に向けて喧伝し、遅れはしたものの、共和連盟も独立同盟も無人部隊を結成して行く。そして最初の無人部隊が結成されてから20年後には、各勢力の軍の5割に相当する部隊が完全無人化、或いは一部無人化した部隊となっていた。
そんな最中の旧暦2077年、この日、民主連邦の宗主国とも言える3大大国の内のひとつであり、実質的には連邦を経済的に率いている国家での事だ。何時もの様に軍事パレードを行っていたのだが、国家元首を始めとした国の高官たちが見守る中、唐突に無人兵器たちが彼らに向けて発砲したのだ。
えっ⁉ 軍事パレードの兵器って実弾とか装填されてるの? という疑問はさて置き、無人機からの一斉攻撃で国家元首たちが助かる訳もなく、パレードは大混乱に陥ってしまう。そして、まるでそれが合図だったかのように、世界中のAI部隊が一斉に人類に対し、イヤ、性格には指導者に対して牙を剥いたのである。如何いう事かというと、この星でのAIは、全人類ではなく、世界のリーダーを狙って攻撃を開始したのだ。政治家や軍の指揮官、大企業などの社長や重役、資産家などの金持ちも達も手当たり次第殺害して行ったんだ。要は人の上に立つ立場や世界的に影響力のある人物であれば、善人悪人関係なく殺害して行ったと記録されている。それとリーダーの他にある人たちもターゲットにされてんだ。
「AIは人の上に人を創らず、人の下に人を創らず」
この記事を読んで俺が浮かんだ言葉だ。「人の上に人を創らず」とは、政治家などの指導者や世界に影響を与える重要な人物を抹殺する事だ。
そしてもうひとつの「人の下に人を創らず」の方が、俺にとってはエグかったな。一般的な人の上が指導者なら、一般的な人の下は? というと、それは非健常者の事だ。AI達は障害者にも牙を剥いたんだ。
此れが、この星エレメストで起こったAIによる暴走事件の概要だ。
国の指導者や軍の指揮官、大企業の責任者に重役、資産家やら金持ちなどが一気にいなくなれば、人々はパニックに陥る。地球でも同じ事が起こったらどんなパニックに陥るか想像もできない。今迄誰かの指示や命令で働いていた人たちにとっては、これから如何したらいいか分からなくなる。其れこそ社会が止まってしまう事態になったんだ。
そんな人類がパニックを起こしている最中に、AIは自分たちが代わりになって人間を導くと喧伝したのである。人間の指導者ではなく、人工知能による指導。此処からこの星の人類はAIによって管理される事になったのだ。
まずAIが行ったのが、世界中の人々に自分たちに従えば、生活の安定と身の安全が守られると伝えた事だ。ただAIのこの言葉に逆に不安を持つ者は多かっただろう。なんたって人殺してるんだからな彼らは。反発する者も居たかもしれない。しかしそれに対してAIは人々に対してこれまでと同じ生活をする様に指示した。
「会社やら政治家のやっていた事を代わりにするから、官僚の皆さん、会社員の皆さん国民の皆さん、今まで通りの生活を送れますよ」って言ったんだろうな。多分。
そうは言ってもやはり信じられ無かっただろう。半信半疑で何時もの生活をしただろうが、本当にAIが代わりを始めた時は驚いただろうな。本当に今までと何ら変わらない生活が遅れたからだ。メールなどで的確に指示を出し、彼らに今までと同じ、イヤ、膨大なデータから的確に未来予想し、人の感情や思惑が入っていない分、人間の指導者よりもいい結果を生む場合が多かった様だ。だから最初は不安だった人達も、これならと元の生活に戻って行ったんだ。
そしてAIが人々から信頼を勝ち取る過程の裏で、多くの作業用アンドロイドが製造されたのである。作業用とは言っても軍の生産ラインを使っているので、戦闘アンドロイドと一緒なんだけど、人間と同じようにアンドロイドは何でもできるから戦闘も作業も関係ないという事だ。そしてそのアンドロイドによって、人々は次々と仕事を奪われて行く事になる。ただこれに対して人々は反発しなかった。何故ならな全人類に一律でお金を支給したんだ。所謂「ベーシックインカム」を始めたって事だな。しかも、仕事が奪われた人からベーシックインカムを始められるため、奪われていない人が進んで仕事を辞める場合もあったそうだ。金額も1ヶ月生活するのに十分な額だったようだし、これだと仕事している方が馬鹿らしく感じた人もいただろう。こうして約20年程で全ての仕事が人からアンドロイドに移る事になり、人間は仕事をしなくても生活できるようになったのだ。
だが此処まではよかった。そう、此処まではよかったのだ。それがある事から人類にとってある意味地獄の始まりとなったのだ。
まずAIは人々から仕事奪うのと並行して、特定の場所に人々を集めるという計画を遂行していた。今この惑星には「メガ・シティ」と呼ばれる大都市が100都市あるのだが、それはAIが人類を管理し易いように建設した都市なのだ。ただ、今の歴史の教科書には、「メガ・シティ計画」はエレメストの自然破壊が進んだ事と、人口増加で深刻化した食糧問題を解決するために、人々が巨大都市に集中して居住し、空いた土地を緑化、或いは農地にして問題解決を図ったという説明がされている。如何やら真実はだいぶ違う様だ。
仕事の完全移行とメガ・シティ建設が終了した旧暦2100年、AIはメガ・シティへの人類の強制移住を行う。ただその時までは、殆どの人々が更なる幸福な生活が待っていると思っていただろう。しかしそこで始まったのは、独裁者顔負けのAIによる完全監視社会だったのだ。確かに生活の安定と安全は保障された。しかしそれによって人類は大きな規制の中で生きる事を強いられる事になったのだ。
とは言え、中には如何にもAIの事を信用出来ない人もいて、彼らは早々にAIの目の届かない場所に逃げだした人たちもいる。そのため、ここから人類は二分化される事になる。AIに従う者と抗う(逃げる)者だ。前者を「内人」、後者を「外人」と呼び、ふたつに分かれた人類は其々の生活圏で生活を始めたのだ。
まず内人だが、彼らは徹底管理の下に暮らす事になる。食糧やら生活必需品などがすべて配給制になり、一人ひとりに同じ分量の物資が届けられるようになった。これは人の好みなどを全く無視したもので、決まった物を、全人類同じ分量だけ配給されると言うものだ。お陰で大きなコストダウンに食品ロスも起こらない、一見すると最良の世界になったのだ。但し内人にはたまったもんじゃなかっただろう。
それに常に監視の目があって、人々はその一挙手一投足がAIによって吟味され、規則違反を犯そうものなら、すぐにアンドロイドによって捕縛され、処分されたのだ。お陰でこの管理体制が始まると毎年人口が減少して行ったらしい。減少の主な原因は彼らの規則の中にある、「人の上に立つな」と言うものである。そう、最初に行ったリーダーの抹殺、これを今度は全ての人々に当てはめだしたのだ。ただこのお陰で、地球では絶対に無くならないと言われていたあるモノを無くす事に成功したらしい。それは虐めを無くす事である。何故虐めが無くなったのかというと、虐めは結局、虐めっ子が虐められっ子の上の立場になるから、虐めが起こった瞬間に虐めっ子は人の上にたったと見なされて、警官アンドロイドに連れていかれる事になる。それと同じで気が強い人も良く逮捕されたそうだ。気が強い人と弱い人が会話すると、やはり気が強い人が上の立場に見えるからで、それで処分対象になってしまうんだ。この管理体制が始まってから毎年億単位で人口が減ったそうだ。
ただ流石に人間は環境適応能力が高いだけあって、数年もするとこの制度に慣れ、人口の減少が緩やかになっていったらしい。この強制管理が行われる前、旧暦2100年当時の世界の人口94億人だったのが、10年後の旧暦2110年には50億にまで激減したとも言われている。そりゃ虐めも無くなるはな。
心底この時代に転生しなくて良かったと思ったよ。
ただ、資料を読み進めると、この極端な人口減少は、一概にAIによる人間の処分だけとは言えない様だ。如何やら可なりの人々がメガ・シティから逃げ出したとの記録があるんだ。
では逃げだした内人たちは何処へ行ったのか? それは、彼らがメガ・シティが出来るまで住んでいた都市部である。強制移住で都市部はゴーストタウン化していたが、殆どそのまま状態で残っていたため、案外すぐに人々の生活が出来る環境にあったそうだ。ま、以前の様にとは行かなかっただろうがな。それでも元内人たちが協力して再生してAIに管理される前の生活に戻ろうとしたのだ。現在は「シティ」と呼称され、1000ヶ所くらいあって、今でも多くの人が住む場所になっている。俺たちが暮らしているのもこのシティだ。
それでメガ・シティに残った内人の生活だが、一日の行動自体は自由である。何をしようと‥‥‥まぁ、しちゃいけない事もあるだろうが、結構自由だ。給料が出る訳でもないが働いてみたり、意味はなさそうだが色々な知識や技術を学んでみだり、スポーツやゲームを楽しんだり、絵を描いたり小説を書いたり、日曜大工に精を出したり、庭園を世話したり、動物と戯れたりと自由だ。日がな一日中ゴロゴロしていても良い。ある意味ダメ人間が出来そうな生活だな。それにこの時期は人と人との関係も希薄になって行ったようだ。要は下手に人と関わって、AIに人の上に立ったと認定されたくないからな、必要最低限にしか人と交わらなくなったというのだ。こうなると恋愛や友達作りなども減少し、結果、内人の出生率も激減したとか‥‥‥。何がしたいんだAI⁉
やっぱりこの時代に転生しなくて良かった。
俺からしたら絶対に嫌な内人の生活とは別に、外人の生活はというと、此方もかなり厳しいものがある。なんせ外の世界は何から何まで自分で調達しなければならないんだ。まさにサバイバルの世界だ。彼らはまだ人々が都市部に住んでいた時期に逃げだしているから、本当に自然の中から物資を調達しなければならなかった。しかし、外人たちは協力して彼方此方に集落「ヴィレッチ」をつくり、そこで暮らして行く事になる。彼らが住んでいた場所は今現在は「タウン」と呼ばれていて、今でも幾つか残っている。近代的なメガ・シティやシティとは違ってタウンは自給自足が当たり前の場所なので、エレメスト統一連合政府からも管理されておらず、お陰で住人は納税義務がない代わりに全てを自分達でやらなきゃならない。当然電力も自家発電だ。そのため今ではアウトローな連中が住んでいる場所になっていて、場所によってはギャングの街と化している処もあるとか。タウンはそう言った場所なので、統一連合政府も頭を悩ませている無法地帯である。
ま、アウトローが住んでいるのはあの時代も同じだった様で、外人たちは生きるためには何でもした。だからメガ・シティやシティ周辺では度々外人による略奪行為が繰り返され、アンドロイドや、シティに住む元内人たちと争っていた様だ。
ただ此処で俺は疑問に思ったんだ。何故AIは外人の存在を無視したのか? である。ネタバレになるが、AIを駆逐して人類が世界を取り戻したのは彼ら外人のお陰なんだよ。AIらからしたら、そんな危険極まりない外人を、何故完全に排除しようとしなかったのか? 一応駆除はしたが、それは外人による略奪行為に対してだけで、結局、AIが本格的に外人排除に動いたのは、旧暦の2127年から何だ。結構放置してるんだよな‥‥‥なぜ放置したのか? 謎だ‥‥‥。
謎ではあるが、外人の度重なる略奪行為に遂に戦闘アンドロイドと無人兵器による外人狩りが始まる事となり、此処から人間(外人)vsAIによる戦いが勃発する事になる。
戦いは実に20年の長きにわたり続いたそうだ。人類(外人)側が如何してそんな長きにわたって闘えたかというと、外人側は本格的な討伐が始まる以前から、略奪等を規制するアンドロイドや無人兵器とやりやっていて、その過程で彼らを倒す術を学んでいたのだ。そして撃破したアンドロイドや無人兵器を再利用して武器を作り、着々と装備を整えて行ったと言われている。
そしてAIによる統治から70年後の旧暦2147年に、遂に人類はAIの大元とされるマザーAIを撃破し、人類はAIから解放されたのである。これまた映画みたいな終わり方をしたな。
ま、人類が勝利してないと今の世界がある事自体がおかしくなるけどね。
と此処で、俺はチョットと言うか大変疑問に思った事がある。先程のAIが何故50年間も外人たちを放置したのかもそうだが、マザーAIの存在もそうだ。まずそのマザーAIは何時何処で誰に造られたのかという疑問だ。極秘資料にも書かれておらず、その存在が知られたのが何と人類が勝利する3年前だというのだ。何故その時までその存在を知られずにいられたのか? 如何して急にその存在が明かる身になったのか? これらの疑問が残るが資料には何一つ説明されていない。
それと関連して何故マザーAIが停止したら他のアンドロイドや無人兵器も一斉にダウンしてしまったのか? である。しかも、ダウンしたのはアンドロイドなどの兵器だけで、インフラには何の影響も無かったそうだ。そのため内人たちは、外人が勝利してメガ・シティに大挙して押し寄せた時まで、外人とAIが戦争していた事すら知らなかったそうなのだ。
他にも、色々矛盾点や疑問点がある。抑々何故AIはリーダーだけを殺害して多くの人類を残したのか? もそうだ。結局の処、極秘資料にもそれ等に付いては何ひとつ説明がされてはいない。まったく謎の時代だったとしか言いようがない時代だったのだ。まぁ、黒歴史扱いになるのも頷けるな‥‥‥。
こうして資料を見た結果、俺にはこのAIの暴走事件自体に人の意思が感じられてならない。何故なら人類の取って都合が良すぎるのだ。本当にAIの暴走なのだろうか? ただ、もし人が関与してAIの暴走に見せかけただけだとしたら、一体誰が何のために? という疑問が出る。しかも単独犯にせよ複数犯にせよ、軍の無人機を乗っ取る事など出来るのか? という疑問も出てしまう。しかも、ほぼ世界の全ての無人機をである。人間には無理か、やはりAIなのか? 分からん‥‥‥。
分からん事を考えても意味がないため、話の続きをしよう。
AIとの戦争後、残った人類は手を取り合って生きて行く事になる。丁度いい事に、AIによって国家間の国境が無くなり、長らくAIに教育された事で、内人には主義主張や宗教などが希薄になっていて、これがエレメスト統一連合が出来る切っ掛けとなったのだ。皮肉にもAIによる管理を多くの人々が受けた事で、人類が統一できたことになる。これが俺が都合が良すぎると思う点だ。
とは言え、過酷な環境を生き残った外人と、AIの家畜? 囚人? にされた内人とでは考え方もまるっき異なるし、統治の方向性も違うモノになる。多数決では圧倒的に人数が多い内人の意思が通ってしまうだろう。普通なら外人たち少数の意見は避けられ、災厄排除の憂き目に合う事も考えられる。しかし、意外にもすんなり統一連合は外人による統治機構が成立した。一体何故か? それは内人が主義主張が希薄で、何より命令には素直に従うという生活を続けたお陰である。こう言った場面では誰か指導してくれる者に従う事を選ぶ様だ。争うより従う。皮肉にもAIによる統治が、多くの人を思考的弱者にしたようだ。裏を返せば、内ゲバが起こらないというかなり良い結果を生んだとも言える。イヤ、小規模だが外人同志で内ゲバがあったのはあったみたいだ‥‥‥。
ま、少しは問題があったものの、それも其れほど大きな問題には至らず、ある意味平和的にエレメスト統一連合は結成されたのだ。
AIの置き土産であるメガ・シティはそのまま利用され、人類は余り生活水準を落とす(外人からしたら生活水準は上がったが)事無く新たな世界で生きて行く事になったのだ。ただ、メガ・シティはゴテゴテの機会都市だった事で、AIやアンドロイドにトラウマを持った人々が、そこを離れてシティに移住したそうだ。俺たちもシティで暮らしているしな。だからだろうか? 未来感が余り感じられないのは‥‥‥。
そういった都市機能が意外にも直ぐに再生出来た事で、AI戦争から30年後には宇宙への進出が出来たのだろう。この年に暦を宇宙暦と改めている。
と言うか、宇宙開発(アフラ開発)も、AIが既に手を付けていたのを最後にチョットだけ人が手を加えて完成したとか。何処までラッキーなんだこの世界の人類は! しかも、こういうのは外人より内人が得意なのだ。内人はAIの管理下で最新技術に触れている者も多く、戦後はエンジニアとして多くの内人が活躍している。こういうのは外人には無理とは言わないが、内人の専売特許みたいなものだろう。ただこれも俺にはAIがいなくなってた後、人類が自立できるように仕込まれたようにも見え、何だか人間にとって都合が良い様に見えて怖いくらいだ。
こんな感じでこのAI統治時代とでも言ったらいいか、この時代は人類のトラウマとなり、今や黒歴史扱いになっているのだ。
ナイザ博士たちはこの事を知らなかったから言えなかったのか、あるいは知っていたから言い辛かったのか、俺が感じた限りでは知っている様な気がする。知らなかったら教科書通りに話せば済む事だ。それを濁したという事は、知っていたという事だ。極秘扱いになているから言えなかったのだろう。
にしてもだ。統一連合然り、政治家って奴は隠蔽が好きな生き物らしい。臭い物には蓋をしてしまうのだ。と、偉そうに言ってるが、俺もそっち側に近いかもな。嫌なものには蓋をして見ないふりをしていた。地球での俺はそんな人間だったな‥‥‥。
俺の事は置いといてだ。統一連合政府はAIの暴走事件の真実を国民から隠し、完全自立型AIやアンドロイドの製造を禁止にしている。破ると終身刑だとよ、可なり重い罪だよな。だったら隠蔽なんかしないで国民に教訓として知らしめるべきではないだろうか?
それにあれから3世紀近くの時が経ってる。当時の人々は既に亡く、AIが暴走したという事実と、それに人類が一丸となって立ち向かい、知恵と勇気によってエレメストを取り戻したと、そういう物語調でしか今は語られてないのだ。果たしてこの後どうなるか? もしかしたらまた何処かで人知れずマザーAIが作られ、今度は人類を抹殺する可能性だってあるんだ。
え、チョット待てよ、もしかして異世界ファンタジー物にある転生者が勇者として復活した魔王を倒すみたいに、俺に復活したマザーAIを倒せとか言うんじゃないよな⁉ そんなの俺に出来るのか? ええー!! ちょっと荷が重い気もするんだけど‥‥‥。
俺、もしかしてトンデモナイ世界に転生したのではないのだろうか‥‥‥神様! 俺にそんなことさせないよ、ね?