怠惰に創作

細々と小説の様なものを創作しています。設定など思い付いたように変更しますので、ご容赦ください。

犬を連れた独裁者 FILE7

ネクルベルガー総帥は、様々な仕事を兼任してはそれを自身が任命した代理の者に押し付け‥‥‥失礼、任せている。だが、そうなると、彼自身は一体如何いった仕事を行っているのか? と言う興味が湧く。ネクルベルガーの私生活や職務に付いては基本極秘扱いなので、何をしているかに付いては詳しくは分からない。しかし、噂や職務内容についての基本情報を元に解説して行こうと思う。

まず最初は軍の最高司令官である国防軍・総軍司令長官の職務だ。彼は軍人なのでこれが本職である。就任当初は軍政と軍令の両方を兼任した役職だったのだが、後に軍政大臣と軍令本部総長を、軍務大臣と参謀本部総長と改名して各々に仕事を任せている。そのため、実は総軍司令長官はこれと言った仕事が無いらしい。無論、各種会議やらなんやら出席しているとは思うが、一般的な仕事は無いと言ってもいい様だ。職務を両元帥に委任した事で、総軍司令長官は名誉職の様な扱いになってしまったと言う事らしい。

但し、総軍司令長官は、軍の大元帥たる皇帝の代理として統帥権を預かっているため権力は有しているし、その権限は馬鹿高い。有事の際の皇国国防軍の意思決定権は総軍司令長官であるネクロベルガーにある。戦争の意思決定を一人の人間によって執り行われるのは、シンプルで良いとも言える。

エレメストでは、有事の際は宇宙軍省と地上軍省から各々高級参謀が集まって統合作戦司令本部を設立し、彼らの合議によって作戦行動が決められる。過去に一度4年戦争時に結成されているのだが、各々の立場による思惑などが絡みあった結果、初戦の劣勢に繋がったとも言われている。そう言う意味では、柵のない皇国のやり方は良いと言ってもいい。しかし、一人の人間に絶対の権力があると暴走する恐れもあり、どっちが良いとは一概に判断する事は難しい。要するにどっちもどっちと言う訳だな。

まぁ、これはあくまでも戦争が起こったらの話だ。戦争が無ければネクロベルガーは名誉職扱いの職で退役まで過ごす事になる。此れと言った仕事も無く、それでいて給料も貰える。羨ましい限りだ。

さて、本職の軍がこのありさまと言う事で、続くは摂政としての職務だ。

摂政は皇帝の代理として本来なら皇帝が行う執務などを代わりに行っている。執務は国事行為関係などの書類に皇帝が目を通して決裁する事だが、今現在はノウァ帝が行うようになって来ていて、実はネクロベルガーはやっていないらしいのだ。摂政がいる意味ないじゃないか!

まぁ、ノウァ帝ももう立派な大人なので、何時までもネクロベルガーに頼ってばかりではいけないと言う事だろう。当然と言えば当然か。なので、ネクロベルガーは摂政と言うよりも、ノウァ帝の補佐役みたいなものになっている様だ。本来皇帝の補佐役は宰相の役目なんだが‥‥‥。

そうなるとますますネクロベルガーが何をしているのか分からなくなってくる。前回でも言ったかもしれないが、本当に仕事してる? と、チョット疑問に思ってしまうのはこのためだ。何かしらはしているのだろうが‥‥‥。当然ながらセキュリティ上の事でネクロベルガーの日々の予定は極秘扱いだ。正式に何をしているのかわ分からない。お手上げだ。

仕事について謎が多いネクロベルガーだが、私生活も謎に包まれている。

ネクロベルガーは、ミシャンドラ・シティの地表面部にサスロ帝から賜った屋敷が、同シティの地下第2階層の軍区画に家族と住んでいた家がある。しかし、ネクロベルガー自身は地下第1階層の行政区画にある総帥府内の自分の執務室の隣に生活スペースがあるらしく、日々そこで暮らしているとか。遅刻とかはなさそうだ。

冗談はさて置き、警備と言う観点で言えば最も堅牢な住居かもしれない。親衛隊が四六時中警護しているからな。まぁ、邸にいても親衛隊の警護は付くだろうけど。

それに噂レベルではあるが、ネクロベルガーは可なりのインドア派で、公務でもない限り外出する事はほぼ無いそうだ。一日の殆どを執務室と住居スペースを行き来しているだけだとか。引きこもりか? 人の行動をとやかく言うつもりはないが、俺は絶対に嫌だね。仕事でしか外出しないなんて人生損してる。

と言う事で、ネクロベルガーの職務と私生活に付いてはこれくらいしか話せないので、次はネクロベルガーの功績と言うものも語っておこうか。

例えば皇帝令第1号(人権剥奪法)だな。これは公けにはサロス帝の功績? 悪法? と言う事に成ってはいるが、ネクロベルガーが大きく関わっているのは事実だろう。如何考えてもサロスだけじゃあぁねぇ‥‥‥。それにサロスはネクロベルガーとの密談の後に皇帝令を出したんだ。ネクロベルガーが吹き込んだに決まっている! と思っているのはクエスの奴だが俺もその考えには賛同している。

この他にもネクロベルガー(サロス)が行った「私兵禁止法」がある。これは貴族が私兵を持つ事を禁止した法案だ。元々これは貴族の力を削ごうとした軍事政権下で出た案らしいのだが、ネクロベルガーはこれをサロスの持つ皇帝の権限によって実行に移したのだ。

抑々ゲーディア皇国の貴族は、ウルギア帝がクーデターを起こしてゲーディア皇国として独立した時に、協力してくれた者の中で特に功績のあった人物を貴族に任命したのが始まりである。なので元は政治家、高級官僚、高級軍人なのである。そんな彼らは任せられた宇宙都市の行政権を一手に握っており、その中に軍権も含まれていたのだ。

一応、国防軍があるため貴族の私兵には国防の意味はなく、上限も設けられていた。そんな中でも貴族たちは私兵を揃え、趣向を凝らした軍服を着せて貴族としての威厳や権威を示している。各都市で行われるカーニバルなどで、着飾った私兵がパレードを行ったりもしていて、そう言う意味では貴族の私兵は見せるための軍隊とも言える。現在は私兵が居ないため、そう言ったパレードには臨時雇いのパフォーマーが嘗ての私兵が着ていた豪奢な軍服を着て行っているそうだ。

ただ、72の都市に大小さまざまな私兵隊がある事に、国防軍は不快感を持っていた様である。彼らは国を守る軍隊だが、私兵は都市、もっと言うと貴族個人とその一族を守るだけの部隊であり、国防どころか都市防衛にも余り期待できない存在とも言える。そのくせ彼らの軍が連携すれば、国防軍すら脅かしかねない規模の軍隊になるのだ。国防軍でなくとも警戒するはずだ。まぁ、貴族間の派閥抗争のお陰でそう言う事態にはならなかっただろうが、大きな力であることは確かである。

ただこれに対してウルギア帝は、あまり関心を持たなかった様だ。お陰でアガレス大公やヴァサーゴ大公など、一部の貴族は上限規定を破って私兵を増強させてもいる。

此処でひとつ皇帝と貴族の関係についておさらいしておこう。

皇帝は領主貴族を任命し、彼らに各宇宙都市の統治を完全委任してその権限を保証している。そのため領主貴族は自身の統治する都市内では絶大な権力を持っていて、徴税権や法律(条令)の制定も自由に出来る訳だ。その代わりに都市の税収から皇帝(皇国政府)に上納金(大体税収の3%~5%)を収める義務があり、他にも領主貴族は一族から近衛軍将校を輩出したりしている。皇帝は貴族の任命とその権力の保障、そして貴族は皇帝(皇国)に対して上納金を収め、近衛士官となって皇族を守ると言った関係で結ばれている。

勿論、領主貴族が統治者に相応しくないと判断されると、皇帝権限で彼らは罰せられる事になる。処遇は主に三つあり、罪が重い順に爵位の剥奪、当主権限の剥奪又は爵位の降格、謹慎である。

爵位の剥奪は文字通り貴族としての称号である爵位(大公、侯爵、伯爵、子爵、男爵)の剥奪で、その瞬間から貴族ではなくなり一般人になると言うものだ。貴族にとって最も重い処遇だろう。

当主権限の剥奪又は爵位の降格は、領主貴族が当主の座を追われて謹慎処分に処されるものと、貴族の爵位が下がるもののふたつである。ふたつと言っても実質はひとつに等しく、要は当主の座を剥奪されると言う事は、領主貴族(大公、侯爵、伯爵)ではくなると言う事で、その下の子爵に降格になると言う事だ。当然子爵は男爵になってしまう事になる。男爵は通常大きな功績を上げた一般人に与えられる称号で、貴族がその爵位に落とされると言うのは屈辱以外の何物でもない。他の貴族からは嘲笑の対象となる。

当然だが、男爵が降格すると一般人になってしまう。ひとつ目の爵位剥奪と同義と言う事で、男爵位の者にこの処罰は適応されないそうだ。まぁ、ひとつ目の爵位剥奪になる訳だな。

三つ目の謹慎は、主に自宅謹慎に処される場合が多く、よっぽどの事でなければ大体貴族は何かやらかすと邸に数か月から数年(大体1、2年)謹慎する事になる。あとは別の貴族に預けられる場合もあるらしい。

話を領主貴族に戻すと、当主がその座を剥奪された場合、元々決められていた嫡子が跡を継ぐ事が難しくなる、らしい。その理由は前当主と統治方針が被っている場合があるからだそうだ。前当主の統治が行き届かないために騒ぎが起こったのに、また同じ統治方針では意味が無いからな。そのため後継者はその一族の中で皇帝の独断と偏見で決められるが、大体が宮廷貴族から選ばれる。

領主貴族の爵位は、現当主とその後継者だけが与えられるもので、その他の兄弟親戚筋は全員子爵となる。そのためこの国では、子爵位が一番多い。

子爵は、基本的には一族が納める宇宙都市で、市議会議員のひとりとして領主貴族を支えるのが専らの仕事である。貴族と言っても「働かざる者食うべからず」なのがこの国の貴族なのだ。とは言え、貴族も一人の人間であり、全ての子爵が市議会議員の仕事しかしていない訳ではない。外に出てビジネスを始めたり、領主貴族(親)の援助の下、芸術や趣味に傾倒したりなど様々である。

そんな中でも宮廷貴族となって、上院議員としての職務に付くものがある。この宮廷貴族、上院(貴族院)議員になる子爵には、ふたつの目的がある。ひとつは領主貴族からの命令である。幾ら自身の領地(宇宙都市)の行政を一手に任されているとはいえ、宮廷(皇帝)や国そのものの内情を知らねばならない。そう言った情報を得るために宮廷貴族として自身の身内の誰かをスパイでは無いが、送り込む必要がある。

ふたつ目は領主貴族との統治方針の違いにより、出奔した者である。子爵は、市議会議員として領主貴族を支える立場ではあるが、統治方針の違いから対立してしまう場合もある。そうなった場合、殆どの子爵が市議会議員を辞して出て行く事が多く、彼らは大体宮廷貴族になる。この場合、彼らは一にも二にも皇帝との結びつきを強くする事を前提に行動する。理由は簡単、万が一にも自分の一族の領主貴族が爵位降格になれば、自分にチャンスが回って来るからだ。皇帝も自分に尻尾を振‥‥‥失礼、忠実な貴族を次の領主貴族に任命したくなるのは人情と言うものだろう。

お陰で貴族の兄弟仲や親戚仲は良くない場合が多いとか、そう言った噂がある。要するに何かあった場合、私を次の当主に指名してアピールを皇帝にしているって訳だな。浅ましい事この上ない。

因みに、領主貴族の後継者指名は皇帝が行うが、場合によっては摂政や宰相が指名する場合もあり、宮廷貴族たちは彼らにも尻尾を振っている。そう言った思惑やらなんやらが絡みあって領主貴族は選ばれている訳だな。ヤダヤダ‥‥‥。

ゲーディア皇国建国から現在まで約40年近く経っているが、その中でそう言った事例はまだ少数だ。ウルキア帝時代にアンドラス伯爵家とアロンド・マリウス伯爵家の当主が従兄弟に当主を変えられた事例と、パウリナ帝時代に宰相サウルによってベリト伯爵家が改易した3件位だ。ただ謹慎は結構ある様だ。しかしこのまま皇国が続けば、そう言った事例も増えて行く事になるだろう。

話を纏めると、ウルギア帝は貴族に甘かったとも言える。貴族に任命した政治家、高級官僚、高級軍人に支えられて今の地位があるとの思いからか、貴族に遠慮しがちだったのかもしれない。2件ほど領主貴族の当主の座を剥奪して別の者に変える事例はあるものの、ほぼほぼ貴族たちには寛容だったようだ。

そして次のパウリナ帝時代であるが、彼女はエレメスト統一連合と結んだパウリナ条約の事もあり、私兵を増強しようとする貴族に待ったを掛け、私兵の上限を厳守させた。平和を愛し、軍事力を削減した彼女はそう言った意味では信念を曲げていない。貴族たちも彼女のその毅然とした態度には従っていたと言う事だろうか?

あと、リストラされた元私兵を近衛軍に編入させてもいる。貴族の私兵を削ぎ、自身を守る近衛軍の増強に成功したともいえる。ただこれは矛盾も孕んでいる。国防軍は削減したのに、近衛軍だけ増強したのは不味かっただろう。国防軍の不満は爆発して然るべきだ。あと、その陰で宰相サウル直属部隊「宮廷警察」も、リストラされた私兵が一役買っていた様である。

抑々、貴族の私兵たちは、徴募によって市民から集められたいわば傭兵みたいなものである。豪華絢爛な軍服に身を包んではいるが、中身は金で雇われた一般人に他ならないのだ。そのため一部ではあるが素行の悪い者も居て、問題も結構起きている。例えば貴族はアガレス派やヴァサーゴ派などの派閥に分かれているが、それらに所属する貴族の私兵同士が乱闘騒ぎの末に傷害や殺人事件を起こしたり、さらには貴族の後ろ盾を背景に市民に対して暴行や恐喝まがいな事も行っていたりと、可成りやりたい放題だったらしい。あくまでも一部ではあるが、結構ヤバい連中もいた様だ。

そしてサロス帝時代で「私兵禁止法」の施行で貴族の私兵は廃止される事になる。

先程も言ったが、元々は私兵反対の立場である国防軍が政権を担った軍事政権が発案である。だが、施行される前に軍事政権は崩壊してしまったため、私兵禁止は流れるかに思われた。が、ネクロベルガーがサロス帝を使ってその法案を施行させたのである。

此処で疑問に思うのが、貴族たちはよくそんな法案を飲んだなと言う事だ。それに付いては以下のような事情があった様だ。第1に費用面、第2に市民の不満、第3に貴族の国防軍への参加である。

まず第1の費用の面だが、私兵はお金が掛かるものの、しかし1ルヴァーの利益ももたらさないと言う事だ。通常の軍隊なら国防と他国への侵略によって、多少なりとも国益に沿うものだが、貴族の私兵はそのどちらもなさない本当に金食い虫なのだ。そのため各都市の中には、その軍事費に都市の予算が圧迫され私兵放棄もやむなしと考える領主貴族も結構いたのだ。そう言った貴族に「私兵禁止法」は渡りに船だったようだ。

第2の市民の不満の声が大きくなったは、先ほども言った通り、私兵の中には貴族の権威を背景に素行の悪い者も居て問題になっている。警察に通報しても、警察にこれを如何にかできる訳もなく、市民は可なり不満に思っていた様だ。そうなると、市民感情が爆発して暴動に発展する恐れもあり、貴族自身にとっても可なり不味い事になる。暴動にでもなれば、下手をしたら自身の統治能力を疑われ、先ほども説明した通り当主の座を追われる場合だってあるからだ。

そう言う場合、大体の私兵はクビになってしまうのだが、中にはクビにされた腹いせに領主貴族の子供を人質に取って立て籠もり事件を起こした元私兵もいる。そのため、私兵の報復にビビってしまい、おいそれとクビに出来ないと言う何とも情けない貴族もいたそうだ。そう言った事情もあって、堂々とクビに出来る理由が出来たのも歓迎された要因なのだそうだ。

そして第3の貴族の国防軍への参加だ。抑々貴族は基本的に近衛軍の士官になるのが通例で、国防軍には入る事は出来なかった。そして国防軍は基本的に一般の国民(市民)で構成されていて、彼らが近衛軍に兵士や下士官として入隊する事は出来たが、士官になる事は不可能(騎士の称号を得る事が出来た場合を除く)である。しかし、この頃から国防軍にも貴族が入る事が出来るようになったのである。国防軍に入る事で、貴族と国防軍とのわだかまりを少しでも緩和しようとするネクロベルガーの考えの下でそうなったとか。中にはヴァレナント大尉のような親衛隊に入隊する者もいるのだ。これで以前ヴァレナント大尉を検索した際に、貴族なのに何で親衛隊に? との疑問も解消された。

これで貴族が国防軍をどうこうできる訳ではないものの、貴族の言い分もある程度酌む事が出来る様になり、貴族たちが国防軍にある程度信用を持つ事で私兵禁止法に寛容になったともとれる。

此処で国防軍に深く関わるようになった貴族家を2家ほど紹介しようと思う。

ひとつはアスタート伯爵家である。アスタート伯家は、元々エレメスト統一連合軍の軍人であり、ネクロベルガー父が艦隊司令官を務めていた時代に艦隊副司令官だった人物が、第29宇宙都市アスタート・シティの当主となった家である。そう言う意味では元鞘に収まったとも言える貴族家でもある。

現当主の名は「グラウス・ロベール・ホールストック」。アスタート・シティの3代目当主だ。現在39歳で何と国防軍の中将でもある。30代で将官、しかも中将である。結構早い出世だが、それもこれも現当主と言う肩書が生きているのかもしれない。

因みに国防軍での彼の評価は高く、なんと皇国地上軍の精鋭部隊である第1方面軍第1軍団指揮官でもある。将軍として評価の高い彼だが、領主としては如何だろうか? ぶっちゃけ国防軍に居るため領主としての職務はほぼしていない。しかし、行政は市議会議員が代わりに行っているので問題無いそうだ。

もうひとつはセーレ伯爵家である。此方は元々高級官僚の家柄だったようだ。早くからネクロベルガーの才に目を付け、彼に接近した貴族家でもある。

現当主の名は「アルファルド・コルン・エヒュラド」。セーレ・シティの2代目当主で現在55歳である。

彼自身はセーレ伯爵家の当主としての職務に励んでいるが、彼の三男リヴァン(22)が国防軍に所属している。ただこの家はそれだけではなく、長男シーザー(30)は嫡子として父親の仕事の補佐をしているものの、次男ペントス(28)はネクロベルガーの補佐である総帥官房長に、長女ヒルデ(25)は宮廷貴族としてスパ‥‥‥国の行政に携わり、四男ヴァイン(21)と次女ユリア(19)は近衛軍に所属している。

因みに、その下に五男アーサー(17)、三女ドリス(14)、四女ライザ(11)がいて、彼らはまだ学生の身であるが、卒業すれば軍や行政に携わる仕事に就くだろう。

この他にも国防軍に入隊した貴族家の者は何人もいる。まぁ、ぶっちゃけ国防軍と言うかネクロベルガーに近付きたいと言うのが本音だろうがな。そう言う意味ではセーレ伯爵家は可なりの成功を収めている。次男のペントスは、ネクロベルガーの側近中の側近である総帥官房長の座にいるのだからな。セーレ家とネクロベルガーの関係は他の貴族たちよりも強固なものだろう。

あと、セーレ伯爵家の人々は美男美女ばかりだそうだ。何かそう言うプチ情報が舞い込んで来ている。興味無し(# ゚Д゚)!! 美人と言えば、アスタート伯にはふたりの娘がいて、可なりの美少女姉妹らしい。と言うか、貴族のご令嬢はさぞ美人で有ろうよ。

え~、気を取り直して‥‥‥。

セーレ伯は、ネクロベルガーに接近する事で自身の家が発展すると考え、全力で働きかけているのだろう。しかし、長い物には巻かれろとは言うが、その長い物が折れれば一緒に折れてしまうのだ。何かに一点投資は危険だと思う。まぁ、俺の知った事じゃあないけどな。

話を戻して私兵は廃止になったものの、貴族個人を警護する警護官や、邸や市庁の警備に当たる警備員などはいる。彼らは貴族に雇われたのではなく、立派な都市行政の職員である。ま、都市は領主貴族の領地みたいなものだからぶっちゃけ貴族に雇われたとも言えるが、貴族のポケットマネーで雇われた訳ではないので私兵とは別である。それでも貴族とその家族を公私に渡って警護している。ま、そう言う仕事だからな。

今回はネクロベルガーの話なので割愛するが、貴族の話をすると貴族家についても色々調べたくなる。ゲーディア皇国は、俺の居たエレメストと違い都市によっての違いが殆ど無い。エレメストならば自然豊かな惑星であるため、地域ごとに様々な気候に文化などの個性がある。そのため観光地や秘境などが豊富にある。

一方のゲーディア皇国の宇宙都市は、設計上みな同じで個性が無い。そのため都市を管轄する領主貴族の統治方法で違いを出している。如何いう事かと言うと、都市其々がその貴族が思う政治主義によって違いを出しているのだ。元は政治家や官僚なのでそこの処は余り問題はないだろう。

例を挙げると、第1都市「バルア・シティ」は、民主主義に則って都市行政が行われている。5年に一度、選挙によって市議会議員が決められ、彼らによって行政が行われるのだ。勿論ここの領主はバルア大公クラウィン・ソロモスだが、議会を開き市議会議員による話し合いで政治を行っている。バルア大公は、言うなれば議長の様な立ち位置と思っていいだろう。

一方、其れとは真逆なのが第2都市「アガレス・シティ」である。この都市は、完全にアガレス大公による独裁によって政治が行われている。勿論選挙などは無く、行政関連での人員確保は官僚採用試験があるのみである。

他にもヴァサーゴ大公の第3都市など全部で15の都市が領主貴族による独裁政権が布かれている。この他の都市は大体が民主的な政策を取っている。しかし、その民主的都市も、資本主義に習った政治を行っている都市や、社会主義的な政治を行っている都市があるなど様々だ。そう言えば、ベーシック・インカムをしている都市が一か所あったな。財源とか如何してるんだ‥‥‥? 機会があったら調べてみよう。ってかクエスの奴こう言った事には興味無いのか?

と言うように、国自体は皇帝による専制政治なのだが、個々の都市は全然違う政治形態をとっているのだ。これでよく国が纏まっているなと感心する。まぁ、要は貴族が皇帝に対して上納金を収め、近衛士官として皇族を守ってくれるなら他に望む事は無いと言った処か。国民も皇帝より領主貴族の政策に注目している感はある。

ネクロベルガーが貴族の私兵を無くしたかったのは、国防軍が私兵に対して危機感を持ってい居たからと言うより、貴族が内政に注力できる様にしたかったともとれる。そして完全に国防軍だけで国を守るのだ。ま、住み分けって奴だな。貴族も自身の身内が居る国防軍を脅威とは思わないだろう。貴族出身の軍人はその立場から結構な高官が多いからな。

と言う訳で、ゲーディア皇国の各都市は政治に条例にと違いがあって面白い。その違いによって何処に住むかを国民自らが判断するのだ。

因みに俺の住んでいるレジエラ・シティは民主主義路線だ。基本エレメストと変わらないため今の処は住みやすい。選挙は俺が来た前年にあったらしく、俺が選挙に参加するにはあと2年は待たなきゃならないらしい。あゝ其れと市議会議員の任期も都市によって違いがある様だ。俺の居るレジエラは4年だが、他は3年~6年と都市によってまちまちだ。

よし決めた! 次は各都市を調べる事にしよう。

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

「オルパーソンさん、おかえりなさい」

 

俺は2日ぶりの雑誌社に意気揚々と入って行く。しかし、俺の挨拶に答えてくれたのはシェルクさんだけだった。

俺はワザとらしく狭い雑誌社の事務所を見回し、シェルクさん以外の野郎ふたりが居ない事を確認してからクエスの所在を聞く。

 

「クエスは?」

「社長はリコ君を連れて何時もの処にいます」

 

シェルクさんは、無表情ながらも鋭い眼光をこちらに向けつつ返答する。ちょっと怖いです。

俺は「何時もの処」と言うワードに、クエスの行き付けの店を瞬時に思い浮かべる。

 

「R&Jか‥‥‥」

「はい」

「すぐに話を聞きたいから取材が終わったら社に直行しろって言ったのは彼奴なんだけどな‥‥‥」

「すみません‥‥‥」

「イヤ、シェルクさんが謝る事ではないですよ」

「あゝそうですね」

 

仕方ないので俺はシガークラブR&Jに向かう事にした。行き違いにならない様にシェルクさんがクエスに俺が行くことを連絡してくれた。まぁ、彼奴がアソコ以外に行く所なんか無いから行き違いになる確率は低いんだけど、万が一って事もある。

R&Jに着くと、クエスとリコが向かいあって何時もの席で一杯やっていた。朝っぱらから何してんだか‥‥‥イヤ、もう昼過ぎてるか‥‥‥イヤ、昼間っからもダメだろ。

 

「おお来たか、ご苦労」

「何が『ご苦労だ』何が! てか、昼間っから酒とは良い御身分だな!」

「僕はジュースっす」

 

俺が昼間っから一杯ひっかけてるクエスを責めると、後輩君が自分は酒を飲んでいないと口を挟んで来た。キミはいいんだよ。

 

「で、収穫は?」

「ま、ボチボチかな」

 

俺は席に着くと同時に2日間の取材の成果をクエス達に話す。まずは皇立科学研究所区域の「1102研究所」で見聞きした事を話す。研究所の内部や様々な研究をしている事を話したが、やはりクエスが食いついたのは人工子宮「エッグ」の存在だ。

 

「人工子宮⁉ エッグ⁉ その怪しげな機械で子供を作ってたって?」

「あゝそうだ。その名の通り卵型の機械がズラッと並んでいてその中に胎児が居た」

「なんだかSF映画みたいっスね」

 

後輩君がワクワクしながらそう言って来る。確かにとは思ったが、あんまり会話に入ってきてほしくない。後輩君には悪いが、一々の反応がガキみたいでイラっとする。

 

「そんでクリミヨシ博士の言い分が人種差別をなくすためだと?」

「あゝそうだ異なる人種の精子卵子をくっつけてエッグ内で培養して胎児を作るのだそうだ。言っとくがエッグについて詳しい仕組みなんかは分からないぞ」

「期待してねぇよ」

 

期待して無いと言われてちょっとムッと来たが、まぁしょうがないだろう。俺だって期待しないだろうからな。

 

「エッグを使って毎年1万人の子供が人工的に生まれている訳だ。親の居ない子供たちがな」

「それって‥‥‥」

「そう言う事だ」

 

怪訝そうな顔をするクエスに、ご想像通りと俺は肩をすくめる。クエスは終始渋い顔をしていたが、人工授精自体は違法でもないので罪には問われない。ただ機械の中で子供が出来るとなると、そりゃそんな顔にもなるだろう。ただクエスは違法性が無い事を考慮してか、あまり口を挟んでは来なかった。

そして次は「保育センター」について話した。エッグから生まれた子供を、ミシャンドラ学園に入学出来る年齢まで育てる施設だ。此方では子供を育てるにあたって放任主義を取っている。当然放任にはメリットとデメリットがあるが、それを踏まえた上で育成を行っている。子供の教育方針に付いては余り興味が無いのか、クエスからの反応は薄かった。その代わりと言っては何だが、後輩君が放任は自由気ままで羨ましいとボヤいていた。キミは親からどう育てられたのかな?

そして話はミシャンドラ学園になったのと同時に、一通のメールが届く。俺はそのメールを見て思わず立ち上がる。

 

「おお如何した?」

「いきなり立って吃驚するっス」

「あ、イヤ‥‥‥」

 

俺が行き成り立ち上がったからふたりとも驚いた顔で俺を見る。だが俺はそんな事よりそのメールの内容に驚いている。差出人はブルジューノ捜査官で、すぐに会いたいとある。俺はそのメールの内容に居ても立ってもいられず飛び出す。

 

「おおい! 如何したんだ取材の続きは⁉」

「あ、ワリ、急用が出来た! この続きはまた今度だ」

「今度って何時だよ! オイ!」

 

俺は呼び止めるクエスを無視してR&Jから飛び出した。向かうはメールの差出人であるブルジューノ捜査官が居るミシャンドラ・シティだ。今朝までいた場所にトンボ返りする羽目になったが、そんな事関係ない。こんなの見せられたら行くしか無いだろ!

 

『グリビン医師の所在が判明した。今すぐに会えないか?』

 

俺は逸る気持ちを抑えつつ、すぐさまタクシーを呼んで空港に向かった。