怠惰に創作

細々と小説の様なものを創作しています。設定など思い付いたように変更しますので、ご容赦ください。

初代皇帝と第4惑星ゲーディア皇国 FILE2

ゲーディア皇国軍は、ご存知の通り元々はエレメスト統一連合軍・第4惑星駐留軍が前身である。

では何故、統一連合軍である彼らが独立に協力したのかだが、理由は至極単純である。当時の駐留軍兵士の殆どが第4惑星の市民で構成されていて、尚且つ、当時の第4惑星の市民たちが、統治機構である統一連合政府に不満を持っていたからである。

勿論それだけではないにしろ、最も大きな理由のひとつである事は間違いない。

それではなぜ、第4惑星駐留軍の殆どが現地民で構成されるようになたかである。元々統一連合政府は、このような事態が起こらない様に駐留軍は現地民で構成させない、或いは少数にとどめていた。更には定期的に別の基地に移動させて、その地域に定住させることも避けていたのである。では如何してそうなったのか、一つには、第3惑星から遠く離れた任地先に行きたくない者が多いと言う事、これはホールの完成によってある程度は解消してはいるが、実際の移動時間がうんぬんよりも、精神的なものが影響しているだろう。

二つ目に、人員や部隊の移動は経済的に大きな負担になるためというのも理由のひとつになるだろう。

三つ目に、同じ土地の人間ならば、考えも同じと言う訳では無いと言う事である。これは人は立場によって行動に変化が起こると言う心理的なものである。有名なものに「監獄実験」があるが、ある役割を与えてその環境で暮らしていると、時間が経過する度に人はよりその役になりきって行くと言うものだ。

第4惑星は先にも述べたが高エネルギー物質「レメゲウム」によって潤っていたが、それは採掘権は統一連合政府に認可された者だけが得ていた。その不公平さに一時期暴動が起こった事があったが、それを鎮圧したのが連合駐留軍である。しかし一つ目や二つ目の理由で徐々に駐留軍を構成する将兵たちが現地民になっても、彼らは暴動が起こった際に鎮圧の手を緩める事は無かった。これも、統一連合政府の一員となった事で彼らが立場を遵守した結果であろう。彼らにも生活や守る者があり、そのように行動する事は無理からぬことである。この事で統一連合政府は、統治者だけを派遣するだけで第4惑星を統治する事に成功したと言えるのである。

それと、当時の第4惑星は左遷地などと言われていたものの良い面もあった。それがレメゲウム採掘の利権である。レメゲウムは大きな富をもたらすため誰しもが採掘権を欲したが、先ほども言った通り、連合政府に公認されなければならなかった。だが、第4惑星行政長官の任にある者は、それを認可する権利を中央政府から与えられており、その特権を利用する事で巨万の富を気付き、それを元手に中央政府に返り咲く事を歴代の行政長官たちは繰り返していた。その事は度々問題視され、時には抗議デモから暴動に発展する事もあったが、その都度、駐留軍によって鎮圧されている。

人間だれしも自分の生活が大事である。システムが崩れた時どういった弊害が起こるか分からないし、それを防ぐために多少非難されても行政に忠実に動いていれば良いと言うのもまた人の心理である。だがそれをあの人物が崩したのだ。

宇宙暦144年3月、ウルギア・ソロモスが第4惑星行政長官に就任したのである。

彼の出現は第4惑星と駐留軍を大きく変える事になる。まず不正を取り締まり、富を市民に還元する。普通の事ではあるが、これだけの事で彼は市民から絶大な支持を受ける事になる。それだけ今までの行政長官が所謂「悪政」を行っていたと言う事だろう。そして彼はその圧倒的な支持を背景に独立論を展開してゲーディア皇国として第4惑星を独立させたのである。その最大の功労者が駐留軍なのである。

まずウルギア帝が行政長官として赴任するのと同じ時期に、駐留軍にもある人物が赴任する事になる。「ドレイク・ネクロベルガー」中将、彼の赴任はウルキア帝にとっても幸運だったかもしれない。

彼は士官学校を優秀な成績で卒業し、宇宙軍に配属されると宇宙海賊狩りで頭角を現していた。ただ生真面目な性格からかよく上官と衝突していて、これが後々に彼の運命を決定づける事になる。

宇宙暦144年1月には47歳で中将に昇進した彼は、4月に第4惑星駐留軍の艦隊司令官が急病で入院した事で、急遽後任をという話になった。当初は副司令官を昇進させる案もあったが、ドレイクを赴任させることに決まった。これは日頃から彼を疎ましく思っていた上層部が厄介払いしたとのもっぱらの噂だ。

皮肉な事に、上官に嫌われた事で第4惑星に左遷され、ウルギア帝に出会って意気投合したことで、第4惑星の独立に繋がるとは当時の誰も予想していなかっただろう。

そして宇宙暦152年2月2日。4年戦争が勃発し、それに便乗するように第4惑星は独立を宣言した。が、勿論すんなり独立できたわけではない。それに反対する者も少なからず存在した。その反対派の急先鋒が駐留軍司令長官の「ホレス・シュハード」大将である。彼はそれまでとは違うウルギアの政策を苦々しく思っていた人物のひとりで、彼の独立論に猛反発し、これこそが統一連合に対する反逆と訴えて、反対派の議員と結託してウルギアを失脚させようとしたのである。しかし、その動きウルギア派にバレていて、ネクロベルガー率いる駐留艦隊がクーデターを起こす事になったのである。

当時の第4惑星駐留軍は地上軍と宇宙艦隊とで構成されていた。地上軍は一個師団と三個旅団で構成されていて、地上にある4つの基地にそれぞれ駐留していた。

一方の宇宙艦隊は、第1衛星「ゾディ・アスタ」に駐留している。当時はまだ第2衛星「アンリ・マーユ」は要塞化されておらず、ゾディ・アスタの宇宙港に20隻の戦闘艦が寄港している。具体的に分けると以下の様になる。

【第4惑星駐留地上軍】

駐留軍司令官兼第5師団司令官・ホレス・シュハード大将。

戦力・第5師団(第1基地所属)、第11旅団(第2基地所属)、第17旅団(第3基地所属)、第18旅団(第4基地所属)

【第4惑星駐留艦隊】

駐留艦隊司令官・ドレイク・ネクロベルガー中将。

戦力・駐留艦隊20隻(ゾディ・アスタ宇宙港)

これだけ見ると20隻ほどの艦艇と軍港に居るその他兵力しか持たないネクロベルガーよりも、地上軍を掌握しているシュハードの方が戦力的に優位にも見えるが、地上軍は地上軍で宇宙にあるゾディ・アスタに戦力を送る術が無い為(あったとしても護衛する艦艇が無い)戦闘が始まった直後に硬直状態になるのが予測される。

シュハードの考えとしては、クーデターを起こしてウルギアを反逆罪で逮捕する。万が一逃がしたとしても、彼が避難するのはネクロベルガーのいるゾディ・アスタである事が予測されるので、その後は地上と宇宙とで睨み合っている隙に統一連合と連携して新たな行政長官を置き、嘗ての統治体制に戻すと言うのが彼のプランだったと予測できる。だがしかし、蓋を開ければその計画は脆くも崩れ去る。最初にクーデターを起こしたのは、シュハードではなくネクロベルガーだったのだ。

2月15日早朝、二手に分かれた駐留艦隊はネクロベルガー率いる第1分隊7隻は首都である「バルア・シティ」に現れ、混乱の中、瞬く間に同都市を占領する。

一方の第2分隊13隻は首都に一番近い第4基地(第18旅団駐留)を急襲する。

この一報を聞いたシュハードは驚愕し、直ちに第2、第3基地に駐留している第11、第17両旅団に第4基地の救援と首都奪還を命じ、自らも第5師団を率いて出撃準備を整える。が、その直後に第3基地の第17旅団がクーデター側(独立派)に鞍替えし、第4基地の第18旅団も呆気なく降伏、この事態に第11旅団内で一部の士官と兵士がが反乱を起こして旅団長が拘束されると言う事件が起こり、クーデター勃発からたった2日で趨勢は大きくウルギア派に傾く事になったのである。

その後、シュハード率いる第5師団は第1基地に籠城して抵抗を続けるが、2月26日に降伏。シュハード自身は拳銃自殺で自らの人生に幕を引いた。

因みに、シュハード側についた議員たちは自殺した彼に責任を擦り付ける言動を繰り返したが、その行為がウルギアの逆鱗に触れてしまい、全員政治犯収容所に入れられる事になった。

そして3月1日、ウルギア・ソロモスは第4惑星ゲーディア皇国の建国を宣言。自ら初代皇帝となったのであった。

そして皇国軍の総司令官にはドレイク・ネクロベルガー「大将」が就き、軍の編成と強化に努めた。

現在、軍の最高司令官はドレイクの息子であるサリュード・A・T・A・ネクロベルガー総帥である。そう考えるとこの国の軍はネクロベルガー一族によって牛耳られて来たと言ってもいいのかもしれない。

 

次回は、ゲーディア皇国の地形と都市について簡単に説明したいと思う。