怠惰に創作

細々と小説の様なものを創作しています。設定など思い付いたように変更しますので、ご容赦ください。

開戦

宇宙暦170年1月、ゲーディア皇国初代皇帝「ウルギア・ソロモス」は、帝位を娘の「パウリナ・ソロモス」に譲り退位した。

2代皇帝(女帝)となったパウリナは、対立関係を深めつつあったエレメスト統一連合政府との友好関係の強化を図る。

4年戦争中、同盟を結び、戦後は独立を認めた統一連合政府であったが、本音としてはアフラ解放戦線と同じく独立を認めず、戦争前の連合による世界統一が目的だったのだが、長引く戦乱で疲弊した連合にはもはや独自の力だけで戦争を早期終結させることが困難なところまで来ており、苦肉の策として政府首脳陣は皇国の戦争協力を要請することとなったのである。

これまで戦争協力を頑なに誇示してきた皇国であったが、連合からの自治権を認める条件に戦争参加を快諾、連合側として戦争の早期終了に貢献したのである。

そんな経緯の許生まれた皇国を連合が快く思っていないのは必定で、連合は故有れば皇国と一戦交えると噂されていた。しかし、戦争で疲弊した連合は国内経済や都市再建を優先して軍事は後回しにされ、更に再建での膨大な量の資源は皇国から購入する事となり、皇国は一気に資源輸出国として飛躍的に経済発展していくことになる。

特に、第4惑星でしか産出されないレメゲウムと呼ばれる鉱物(のちに他の資源小惑星にもある事が判明)は、圧縮して結晶化する事で膨大なエネルギーを取り出す事の出来る鉱物で、それによって皇国は政治的にも経済的にも有利な立場になって行く。

そして宇宙暦162年、国内再建が一段落した連合は、急速に発展する皇国を警戒して第一次軍備再建計画を発表、皇国を仮想敵国とし、急速に軍備拡張路線を突き進む。

一方、皇国では当時は余り軍事に力を入れていなかったものの、連合の動きに危機感を持ち、資源輸出によって得た潤沢な資金力を持って軍備拡張を進める。

こうして両国が軍拡競争へと向かう中、世界中の人々が再び戦争になるのではないのかと不安を抱える事になる。

そんな中、皇帝となったパウリナはこの対立構造を解消するため奔走し、宇宙暦173年に両国の発展と平和を願った平和条約の締結にこぎつけるのである。通称「パウリナ平和条約」と呼ばれるこの条約は、これ以上の軍拡を禁止して両国の協議によって軍縮を行うというもので、同年に第1回軍縮協議が行われる。ここでは具体的な軍縮案は提示されなかったが、翌年の第2回には提出された軍縮案がほぼ可決するに至ったのだった。

これで世界が平和になる。4年戦争のような悲劇が無くなると思われた宇宙暦177年7月、皇国でクーデターが勃発して2代皇帝パウリナが幽閉される。「7月事件」と呼ばれたそのクーデターの首謀者はパウリナ条約に反対する軍部将校たちで、3代皇帝にパウリナの兄のサスロ・ソロモスを据えて軍事政権を樹立したのである。

この政権の誕生に警戒を強める連合だったが、意外にも軍事政権はパウリナ条約を破棄する事は無く、表面上は条約を結んだままであった。しかし、軍縮に対しては一切を停止しこれ以降両国が軍縮を進める事は無くなったのだった。

ここから皇国内に暗雲が立ち込める事になる。まず手始めに宇宙暦180年にはクーデターを起こした軍部将校たちが、皇帝サスロの命を受けた近衛軍によって粛清されるという「5月事件」が起こり、その後も近衛軍による政治犯やその疑いがある者の粛清(虐殺)が頻発し、皇国内はサスロの恐怖政治によって支配されて行くのであった。

更に対外政策においては、皇国が秘密裏に軍拡をしているという情報により、連合との関係が完全に冷え切ってしまい、連合も水面下で軍拡の準備を行う事になり、世界は一気に緊張状態になって行くのだった。この時期、戦争が起こらず年を越して新年を迎える度に「奇跡の1年」「2年」「3年」と続いていき、何時これが終わりを迎えるのかと、不安と恐怖が世界中に蔓延して行くのだった。

そんな最中の宇宙歴189年4月、ある軍事施設を視察するため向かっていた公用車が何者かによって襲撃される事件が起きた。この襲撃により皇帝サスロは死亡。一緒にいた近衛軍司令長官も皇帝と運命を共にする。

皇帝と、その皇帝の片腕として恐怖の象徴であった近衛軍司令長官の死は、皇国全土に衝撃を与え、皇帝を襲撃した者たちはその勢いに乗って皇国首都ミシャンドラ・シティへ軍を向かわせたのであった。彼らは民主主義を掲げ、専制政治である皇室打倒を宣言して、新たな国家を築こうと立ち上がった者たちで、軍内部にもいた彼らが皇帝の死で一斉に蜂起したのだった。

しかし、彼らのクーデターは未遂に終わる。当時の皇国軍総司令官「サリュード・A・T・A・ネクロベルガー」元帥の迅速かつ的確な指揮のもと、情報が錯綜してパニック状態の軍を立て直してクーデター軍を鎮圧したのである。

クーデターを鎮圧して一気に皇国の実権を握ったネクロベルガーは、4代皇帝に先々代の皇帝パウリナの娘で、「7月事件」の際に行方不明(実際は身分を隠して月に亡命)になっていたノーヴァ・ソロモスを戴冠させ、自らは摂政となり、政治と軍事の両方の実権を握ることとなる。

更に宇宙暦195年にノーヴァが不慮の死(暗殺説あり)を遂げると、当時6歳の彼女の息子「ウルキア・ソロモスⅡ世」を5代皇帝に付けて自身は再び摂政となる。

さらに翌年の1月3日に、ネクロベルガーは平和条約パウリナ条約を破棄、皇国軍の軍備拡張計画を公に宣言する。

これを受けて、連合軍も翌日に極秘裏に進めていた軍備増強計画「88年計画」を公に発表し、当初小規模だったものを大規模に進めていくこととなった。

そして宇宙暦197年7月、エレメスト統一連合軍は、ゲーディア皇国に対して宇宙艦隊の派遣を決定。同年8月中頃に宇宙艦隊の半数である6個艦隊を第4惑星へと派遣する。

一路第4惑星へと向かった統一連合宇宙軍・遠征艦隊は、同年8月26日午前9時、その眼前に皇国軍の最前線基地ともいえる第4惑星の第2衛星「アンラ・マーユ」に到着するのだった……